2014 Fiscal Year Research-status Report
非財務情報の開示に関する実態調査とその情報効果及び経営者行動に関する研究
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25380607
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中條 祐介 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (40244503)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中期経営計画 / 非財務情報 / 有価証券報告書 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、まず「現在、求められる財務報告とは何か」ということを改めて考察した。会計ビッグバン、コンバージェンス、四半期報告や定性情報の拡充などが企業の会計行動に及ぼす影響を検討した。その結果、今日においては、中長期的な視点に立った情報や必ずしもひな形にとらわれない経営者の視点を活かした定性情報の充実が財務報告に求められていると指摘した。中長期的な視点に立った企業情報の代表に中期経営計画情報があるが、当該情報の研究に関する経緯を跡付け、特に財務会計に関する研究を、開示実態、開示企業の特徴の2つの観点から整理した。 中期経営計画の開示実態としては、プロネクサス社提供のデータベース「eol」を用いて、2001年度から2013年度において「中期経営」をキーワードにTDNETにアップロードされた「その他適時開示書類」を検索したところ、2001年度は224文書の抽出にとどまったものの、その後2008年度(1,682文書)まで一貫して増加し続けていた。2009年度は1,242文書と大きく落ち込んだが、その後再び増加に転じ、2013年度には1,689文書が抽出された。企業の開示書類において中期経営計画に言及したり、中期経営計画に関連付けて公表される傾向が高まっていることを明らかにした。 開示企業の特徴としては、非開示企業に比べて企業規模が大きく、負債比率が高いこと、また外国人持株比率と社外取締役比率が高いという特徴がみられた。 さらに、有価証券報告書の開示及び記載事項のあり方について検討を行った。現行の有価証券報告書は、①開示項目は国外の制度と比較して見劣りしない、②各記載項目が孤立的に記載され、他の項目との関連性を理解し難い、③タイムリーネスの点で他の開示制度に劣る、という特徴を明らかにした。そのうえで、有価証券報告書の可能性を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、①日本企業における非財務情報開示の実態、②非財務情報の開示による情報効果の検証、③非財務情報の開示と経営者行動の関連性の検証、④非財務情報の定義と開示モデルの提示することを目的としている。これまでの研究でを通じて、①、②、④については終了ないし基礎的な分析は終了している。③については今年度実施予定である。 また、平成26年度の研究計画としては、平成25年度に構築したデータベースのアップデート、先行研究のレビューの追加、平成25年版日本企業における非財務情報の開示実態の確認をすすめることができた。非財務情報の情報効果の検証については、平成27年度においても継続しているが、パイロットテストについては完了している。 以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度にあたる平成27年度は、非財務情報が目標設定された場合の経営者行動に及ぼす影響に関する実証分析を実施する。例えば、市場占有率が目標設定された場合、市場占有率を確保するために売上総利益率や営業利益率の低下が許容されるかといった検証である。もしこれらの事象を検出できた場合、私的会計政策研究に関する新たな分析視角を提供すると考えられる。 また、GAAPによらない計算方法により報告されるプロフォーマ利益ないしNon-GAAP利益の情報有用性についても併せて検証する予定である。 これらを踏まえ、本研究課題を総括するものとして、研究期間を通じて得られた実証研究等の知見を踏まえ、非財務情報の開示モデルの提示を予定している。以上の成果は、研究会・学会発表や雑誌などへの投稿を通じて公表していく予定である。
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