2015 Fiscal Year Research-status Report
企業会計についてのゲーム論的考察:多期間モデルの構築
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25380617
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
田村 威文 中央大学, 経済学部, 教授 (70268499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 秀明 西南学院大学, 経済学部, 准教授 (10610959)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 利益操作 / 企業会計 / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は以前から、ゲーム理論に基づく会計研究に従事してきたが、その大半は1期間モデルによる考察である。会計利益には、ある期に利益操作を行うと、他の期にその反動が生じるという特徴が存在するが、1期間モデルではこの点を考慮できない。本研究では、多期間モデルを構築することで、より現実的な企業会計の分析を目指している。 平成25年度には、本研究のテーマの絞り込みを行うとともに、利益操作に関する既存研究で使われている手法などを理解するよう努めた。平成26年度と平成27年度には、多期間モデル構築などの作業をすすめ、完成には至っていないものの、ある程度作業は進んだ。 平成27年度末の時点では、3つの研究を並行して進めている。第1の研究では「会計規制の強化は投資家にとって有利になるのか」というテーマを、2期間のシグナリングゲームの手法を用いて考察する。「送り手(企業)のタイプ」「送り手(企業)のメッセージ」「受け手(投資家)の反応」はいずれも連続的ではなく離散的であり、利益操作の手段として会計的裁量と実体的裁量の両方を考慮している。第2の研究では「企業はなぜ利益操作を行うのか」というテーマを、2期間のシグナリングゲームの手法を用いて考察する。「送り手(企業)のタイプは離散的」であり、「送り手(企業)のメッセージ」「受け手(投資家)の反応」は連続的である。会計的裁量だけをとりあげ、実体的裁量は考慮していない。なお、第1の研究と第2の研究は数値例による考察であり、一般化したモデルによる考察ではない。第3の研究では、より一般化したモデルを構築するための基礎的作業として、経営者による報告利益管理の方法である会計的裁量と実体的裁量の2つに着目した既存の分析的・実証的会計研究を、ゲーム論的考察に限定することなく概観し、会計的裁量への規制強化が経営者の実体的裁量をいかに誘発するのかを整理する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多期間モデルの構築に向けて、作業にある程度の進展はあった。ただし、平成27年度中に論文を掲載する(あるいは投稿する)ことまでを目指していたものの、それは達成できなかった。 作業が遅れた第1の理由は、所属機関に関する点である。科研費申請時には、研究代表者と研究分担者がともに中央大学経済学部に所属していたが、研究分担者の移籍により、平成25年度はともに首都圏ではあるものの、別の大学となった。また、研究分担者の再度の移籍により、平成26年度以降は所属大学が東京と九州という遠隔地になった。研究代表者と研究分担者はメールでかなり頻繁に連絡をとり、実際に会っての打合せも数回行ったが、当初想定していたものとは異なる状況になった。 第2の理由は、多期間モデルの構築に向けて作業を行っている際、「分析手法について理解が不十分な箇所がある」「新たな分析手法の理解が必要である」という点が明らかになったことである。それらの習得に時間を割く必要があり、モデル構築そのものの作業は、一時中断せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度末の時点で、3つの研究を同時に進めていることを「9.研究実績の概要」で記した。それらは未完成ではあるが、分析手法などの大枠は、既にかなり明確になっている。それゆえ、平成28年度はこれまでの作業の延長線上で、モデルの完成および論文執筆をすすめていく。平成28年度中に、3つの研究のうち少なくとも2つについては、論文掲載までたどり着きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
モデル構築および論文執筆の作業が予定より遅れているため、一部の費目が未支出になっている。また、研究代表者と研究分担者が実際に会って議論する機会をもうけたものの、それほど回数が多くはなく、旅費が予定額を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には必要な書籍などを購入する。また、研究代表者と研究分担者がこれまでより頻繁に打合せを行うため、旅費が増大する。論文投稿料などの支出も予定している。
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Research Products
(2 results)