2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380620
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
坂上 学 法政大学, 経営学部, 教授 (50264792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | テキストマイニング / テキストデータ / XBRL / ベイズ推定 / 生物学的同等性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第4年度となる平成28年度は、前年に引き続き財務データの収集及び整備を進めるとともに、実際の分析作業もあわせて進めた。具体的には、EDINETより入手可能なXBRLデータについて、全上場企業の有価証券報告書および四半期報告書を入手し、そこから財務データおよび定性的データとしてテキストデータを抽出した。 まず行ったのは全企業のテキストデータからTF/IDF法による重要語を機械学習の手法を応用して抽出したが、1年分でおよそ30GBのデータとなるため、作業は困難を極めた。結果として分析に使うコンピュータシステム自体を大幅に高性能化する必要があり、システム構築にやや手間取ることになった。128GBのメモリを搭載する新たなシステムを構築し、再度分析に取り掛かった。 今年度に主としておこなったのは、東日本大震災の経済的影響とその後の動きについて、財務データだけでなくテキストマイニングの手法を使って検証することである。震災が発生した2011年度の業績は一時的な落ち込みが見られ、当初は東日本大震災の影響が大きいのではないかと思われたが、テキストマイニングの結果からは、東日本大震災は新たなリスクを認識させたものの、財務的な落ち込みについては、タイにおける洪水被害によってもたらされていることが判明した。これらの分析結果は日本ディスクロージャー研究学会の研究大会において報告されたほか、おそらく2017年度中に著書の分担執筆部分として公刊される予定である。 またいわゆるp値による仮説検定手法についても、近年問題視されることが多く、ベイズ推定や生物学的同等性の検証方法の有用性についても研究をおこなった。この研究成果の一部は、『會計』に掲載された「過渡期にある会計研究」と題する論文として公表している。なお研究計画ではフラクタル分析を行う予定であったが、最終年において行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を申請した段階ではフラクタル分析など定量的な分析に重きを置いた研究を行う予定であった。EDINETから入手できるXBRLデータが、定量的な財務諸表データのみに限定されていたことがその理由である。しかしながらXBRLデータの範囲が『有価証券報告書』全体にまで広がり、膨大なテキストデータを入手できる状況となったため、研究計画をやや変更し、大量の定性的データをあわせて分析するという方向に軌道修正をおこなった。その一方で、定量分析にかかせない統計的検定について、近年のp値を用いた手法の問題点について深く掘り下げることもおこなった。これらの点においては大きな進展は見られたものの、当初予定していた定量的分析手法の探求という意味においては、やや後回しの状態となっており、全体の評価としてやや遅れているという判断となった。
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Strategy for Future Research Activity |
EDINETから入手できるデータの状況に大きな変化があり、膨大なテキストデータが入手できるようになって、今年度で既に4年目となっている。実証的な研究をおこなうのに十分なデータの蓄積が進んでいることを鑑み、新たな分析手法の探求として、膨大なテキストデータを扱うテキストマイニングなどの分析手法の会計研究への応用という方向性は欠かせないものとなっている。このため、当初の計画をやや軌道修正し、定性的な分析手法のウェイトを高めることにした。またテキストマイニング手法の応用の延長線上にあるディープラーニング手法の応用についても着手する予定である。これらの定性的データに対する分析手法を取り入れることによって、より深みのある分析手法を探求していくことにする。
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