2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380622
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
片岡 洋人 明治大学, その他の研究科, 教授 (40381024)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 製品原価計算 / 収益性分析 / 原価計算対象 / レベニューマネジメント / 理論的・定性的アプローチ / 実証的・定量的アプローチ / 理論的・定量的アプローチ / 実証的・定性的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
第2年度(平成26年度)には、初年度に明らかにした実務で取り上げられている諸問題を、理論的な視点から再検討し、新たなインプリケーションを引き出すことができた。 まず、日本原価計算研究学会全国大会の自由論題報告においては、実証的・定性的アプローチにより、日本企業独自のコンテクストをもつ2社のケースを取り上げて報告した。いかなる経緯を経て現在の経営システムが構築されたのか、そして何故そのような詳細な原価計算対象(プロフィットセンター)の設定が必要であったのかを明らかにしている。取り上げた2社の製品原価計算システムでは、各々のコンテクストの下、適切な収益性分析が行われていた。 第2には、現在のアメリカ型の研究の大半を占める実証的・定量的アプローチの批判的検討を行った。前述の学会報告では、実証的ではあるものの定性的なアプローチを採用している。さらに一時点のみの静的な考察ではなく、欧米のケーススタディと比べて、各々のコンテクストを踏まえた動的な考察であることが特徴的である。また、理論的(分析的または規範的)・定量的アプローチが必要であることも指摘している。ただし重要なことは、方法論主導ではなく、歴史的な経緯やコンテクストを踏まえたうえで研究を進めることであると指摘している。 第3には、理論的・定量的アプローチに基づいて、テキストで一般に説明されている先入先出法による累加法には、前工程期首仕掛品原価の影響が後工程期末仕掛品に及ぶことを分析モデル化によって定量的に明らかにしている。その上で、いかなる状況においてそのような問題が顕在化するのかを示した。 以上、平成26年度においては、実証的・定量的アプローチの批判的検討を行うのと同時に、理論的・定量的、理論的・定性的、および実証的・定性的の各アプローチにより、製品原価計算論の新たな視座を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には、製品原価計算論における実証的・定量的アプローチ以外の3つの研究アプローチを実践することによって、学会報告を1件(学会報告用フルペーパーを含む)、学術論文を2件(査読有1件、査読無1件)、およびエッセイを3編という研究成果を発表した。3編のエッセイでは、アメリカ型の実証的・定量的アプローチではなく、実証的・定性的アプローチと理論的・定量的アプローチが必要であることを示し、それらを各々の学術論文で実践することができたからである。すなわち、『管理会計学』に掲載された査読付論文はモデル化とシミュレーションによる理論的・定量的アプローチに基づいており、学会報告用フルペーパーは組織コンテクストを踏まえた動的な理論的・定性的アプローチに基づいている。さらに、『會計』に掲載された論文については理論的・定性的アプローチに基づいて執筆し、他のアプローチへの展開の可能性を示唆している。 その一方で、平成27年度における研究報告および学術論文の投稿への準備を着実に進めることもできた。最終年度でも数件の学会報告を予定しているが、日本原価計算研究学会の第41回全国大会の統一論題における研究報告や、海外における学会での研究報告へ向けての準備も順調に進んでいる。 このように、平成26年度には、各研究アプローチの存在を明示した上で、実証的・定量的アプローチに傾倒する危険性を提示した上で、実証的・定性的アプローチ、理論的・定量的アプローチ、さらには理論的・定性的アプローチにより研究成果を発表することができたのは、今後の研究へのインプリケーションが非常に大きいといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度(平成25年度)における製品原価計算実務から得られた知見、および第2年度(平成26年度)における各研究アプローチ別の知見は、最終年度(平成27年度)における研究を進める上で重要なインプリケーションをもたらしている。したがって、最終年度においても継続して複数の企業へのヒアリング調査を進めていくと同時に、理論的なアプローチと実証的なアプローチとの相互作用を引き出すことが重要であると考えている。 第一に、「レベニューマネジメントと収益性分析」『會計』187(5)においても提示したように、流通チャネル等の相違が企業の持続的収益性に及ぼす影響を分析するためには、プロフィットセンターを詳細に設定するのと同時に、各プロフィットセンターの収益性を分析する必要がある。この論文には大きな展開可能性がある。まずはレベニューマネジメントを実践しているさまざまな企業へインタビューすることによって、理論的・定性的アプローチから実証的・定性的アプローチへ展開することが可能である。さらに、レベニューマネジメントと収益性分析のアルゴリズムをモデル化することにより、理論的・定量的アプローチへ展開することもできる。 第二に、工程別総合原価計算を適用している企業へのヒアリング調査によって「先入先出法による累加法の検討」『管理会計学』23(1)の知見を発展することができ、リードタイムが長い製造工程や工程内在庫を多く有する企業において問題がより顕在化する可能性があることを検証することができる。また、同論文におけるモデル化により、先入先出法による累加法の多くの特性を明らかにすることもできた。その特性をさらに詳しく検討することで、より多くのインプリケーションを引き出すこともできるだろう。 以上より、最終年度では、本プロジェクトにおけるこれまでの研究成果を発展させる方向で研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
購入の予約をしていた図書の入荷が間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予約していた図書が入荷され次第、購入の予定。
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Research Products
(6 results)