2014 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災被災地における家・村の「再生力」と農・漁家女性の参画
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25380651
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
牧野 友紀 福島大学, その他部局等, その他 (50455862)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 女性 / 農山漁村 / 家 / 観察 / 生活秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は東日本大震災の被災地において、農家および漁家がいかにして自らの存続基盤を取り戻し、農山漁村の再生を図っていくのかということを、集落における女性の参画のあり方から実証的に解明することを目的としている。平成26年度は、岩手県陸前高田市および福島県南相馬市、福島市を対象とする調査を実施し、被災地域における家・村の再生力の構造と女性の復興支援のあり方について解析し、研究結果を学会等で報告し、論文作成を行った。 具体的な研究成果のポイントは以下の通りである。 (1)ジェンダー非対称性の条件の下で行われる、農漁家女性の「自己観察」をとおして、震災後の現実を変革する必要性が彼女らに鋭く把握されているということ、さらに、そうした自己観察は、外部者による「他者観察」に支えられていることが明らかになった。女性たちはこうした観察を手がかりとして直売所、農家民宿などの復活や展開に向けて精力的に活動していることが確認された。 (2)農漁家が当たり前のように営んでいる事柄、その配列やルールを農漁家の「生活秩序」として把握し、福島の放射能汚染地域において充分な営農を行うことができない農家にとって、いかにその秩序の取戻しが可能となるのかという観点から調査研究を進めた。その結果、農家家族自身が(営農の可否を含む)構想を立て、家族自身で年間の行動スケジュールを決めていくといった自作農家家族特有の生活構想と行動が重要であることが確認された。 (3)昨年度の研究成果をふまえ、災害における「社会的なもの」と「人間的なもの」との関係を視野に収めた社会理論と、「家・村」論との接続の可能性について理論的考察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、陸前高田市における本調査を平成25年度に実施することができたため、陸前高田については本調査結果の解析や仮説を裏付けるための補充調査を行った。福島県(福島市・南相馬市)では、対象集落をいくつか選定して調査研究を進め、陸前高田との比較研究を行うことができた。それらの研究成果を日本社会学会をはじめとする複数の学会で報告することができ、また雑誌論文の投稿も可能となった。しかしホームページでの公開については、所属機関でのサーバー確保を行うことができず、断念せざるを得なかった。 以上から本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、本研究を完成する最終年度としてこれまでの研究成果を集約して報告書にまとめるための総合的な作業を進めていく。とりわけ、農漁家の「生活秩序」および農漁家女性の「自己―他者観察」という視点から東日本大震災被災地における農漁家の再生力と女性の参画のありようを論述していくこととする。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた陸前高田市での本調査を平成25年度に前倒しして行ったため、当該年度の支出が大幅に減った。平成26年度に計上していた予算を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗等により、可能な限り最小の費用で遂行したことから生じたものである。今年度は本課題研究の総括として研究を進め、適切な経費執行を行う。その場合に不要となった分については返還する予定である。
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Research Products
(3 results)