2015 Fiscal Year Annual Research Report
福島県における「原発問題」と新聞との関係に関する基礎的研究
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25380653
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
安田 尚 福島大学, 行政政策学類, 特任教授 (30157995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原発安全神話 / 福島第一原発事故 / 日本メディア / 仏メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
日本メディアが原発「安全神話」の流布に貢献しているかを福島県紙、中央紙で検討した。この点でのその貢献は、明らかとなった。 最終年度は、2011年の「原発事故」に関する、日仏メディアの報道を比較検討した。①「メルトダウン問題」について見ると、『ルモンド』は「12日の朝、福島の原発施設で発生した爆発は炉心溶融とその地域の放射線汚染の恐れを引き起こした」と報じた。その時日本のメディアは、「メルトダウン」の恐れを報ずるどころか冷却水注入の実況中継を伝えていた。官房長官は水素爆発による放射能は「直ちに健康に害」を与えるものではないと「安全」報道に終始していた。東電が「メルトダウン」を認めたのは、一ヶ月後の4月20日であった。「安全神話」に陥っていた日本の新聞やテレビは、政府や東電の「大本営発表」を垂れ流していたのである。②「情報源の多様性」について見ると、仏紙『ルモンド』は「メルトダウン」の恐れを伝えた同日の付録で「フランスの原発を30年後には廃止」すべしとする論評を掲載している。これは性急なコメントともいえるが、多様な見方をいち早く伝えようとする姿勢は窺える。また、フランスのメディアは、米軍からの情報も直ちに取得し報道している。第三に「福島第一原発」の「水素爆発事故」の「程度問題」をみると、フランスのメディアは事故後三日目の14日に、「仏放射線防護原子力安全研究所(IRSN)」によると、この爆発は「チェルノブイリ級」に達する深刻な事故であると伝えている。日本政府がこれを認めたのは、なんと4月12日であった。日本政府やメディアの「国民をパニックに陥らせないため」との言い訳は通用しない。むしろ、この深刻度の評価や「SPEEDIの情報が迅速に「情報開示」されていれば、どれほど住民の被害を軽減できたか想像に難くない。自らも「安全神話」に囚われていた日本メディアの罪は深いといえよう。
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