2013 Fiscal Year Research-status Report
戦前・戦中における農村の社会問題と保健婦制度の構築に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
25380656
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
川上 裕子 千葉大学, 看護学研究科, 助教 (20612196)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 保健婦(保健師) / 農村保健 / 保健婦養成所 / 産業組合 / 国民健康保険 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
初年度である平成25年度は、統一的な保健婦資格成立以前に第一種養成所としてわが国で最初に指定された島根県社会保健婦養成所における保健婦養成の検証を主軸に、以下のとおり研究を遂行した。 1)先行研究の収集と検討:農村社会事業、農村保健、産業組合、女子中等教育史に関する文献の収集を行った。看護歴史研究、社会福祉学、協同組合研究の研究動向や成果にも目配りし、関連する文献を収集した。また、これまで研究代表者が行ってきた調査資料のうち、農村社会と保健婦制度の構築に深く関係するインタビュー調査のテープ起こしを行い、内容の理解を深めた。 2)資料収集と内容分析:本研究の対象時期に刊行された雑誌『医療組合』『保健教育』『健民』を国立保健医療科学院図書館にて通読し、それらに掲載された政策動向記事や保健婦の活動日誌から、町村や産業組合が運営した国民健康組合の発足や普及、強化の過程と住民の生活実態を読み取る作業を行った。また、島根県における社会行政の全体像を明らかにするため、島根県立図書館郷土資料室にて昭和15年から20年までの『島根県報』『現行島根県例規全集』を閲覧し、関係箇所を複写した。その他、島根県立大学の研究者や松江市役所職員など関係者とのネットワークを広げ、資料の所在や調査対象者の選定に関する情報収集を行うことができた。1)と2)の作業をもとにインタビューガイドを作成した。歴史社会学的な分析方法については、1年を通して戦後内政史研究会に参加し知識を深めた。 3)インタビュー調査:島根県松江社会保健婦養成所の一期生2名と三期生1名へインタビュー調査を実施し、教育内容の実際や卒業後の保健婦としての活動内容を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献検討や資料収集については、計画通りに進展している。他方で、インタビュー調査については、計画の段階では8名程度を見込んでいたが、現段階で3名にとどまっている。しかし、これについては調査対象者の過半が90歳代前半という高年齢であるため、体調等によりインタビューの実施が予定通りに進まないことは想定内のことであった。今後も対象者の状況に合わせて実施していきたいと考える。また、収集した資料の整理と分析が不十分に終わったため、来年度に持ち越して実施していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に資料の収集はかなり進んだが、整理と分析が不十分であるため、考察を進展させていく必要がある。平成26年度前半は島根で実施した調査の分析を完了させるとともに、これまでの調査研究の成果を踏まえて第一種保健婦養成所が存在した他県(東京、大阪、岡山、鹿児島)の調査に着手する。新たな調査地に関しては、現時点でインタビュー対象者の選定に目途が立っておらず、資料収集とその分析が中心になる可能性も想定しておかなければならない。そして、一地方の保健婦養成が、その地域の生活環境や経済状況、中心的推進者の戦略からどのような影響を受けたのか、国民健康保険制度の運営に着目して分析していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はインタビュー調査の実施人数が当初予定より少なかったため調査旅費が抑えられ、インタビュー調査の実施が年度末となったためテープ起こし費用が次年度に回ることとなった。 平成26年度から所属機関が変更となり、パソコンやプリンターなど本研究遂行のための物品の整備が必要となる。その他の主要な使途に関しては当初の計画通り、図書・文献資料の購入費と調査旅費、平成25年度実施分も含めたインタビュー調査のテープ起こし費用となる。
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