2015 Fiscal Year Annual Research Report
農業・農村生活の価値づけに関する質的研究法を用いた実証的研究
Project/Area Number |
25380662
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
伊藤 勇 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (90176321)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / 農の価値 / 質的インタビュー調査 / 事例研究法 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)実地調査:前年度までの研究協力者群と少し異なるタイプの幾人かの新しい協力者を見いだし,インタビューを実施した。 (2)データ分析・解釈:前年度のアジア農村社会学会で発表した分析・解釈内容をベースにしつつ,今年度の調査結果を加えて,これまでのインタビュー協力者全員の記録を読み直し,「農」への価値づけを語る言葉の語彙と論理における特徴を再整理した。また,これらの価値づけに関わる人生経験上の1つの重要な契機として,個人史上の深刻で劇的な問題経験(エピファニー)を確認するとともに,それらを4パターンに分類した。今回の研究協力者のうち約40%の人たちが,大変厳しい個人的なトラブルに遭遇して仕事やライフスタイルや価値観の再考を迫られ,再考の中で農業に目が向くようになり,実際に農業に専心することを通して,農業や田舎暮らしの新しい価値や利点を発見している。かれらの語りからは,農業自体が持っている啓発力のようなものがかれらに農業に目を向けさせ,再認識させている側面も見いだされた。農業者,農村住民における価値の再認識の必要性は農業や農村の危機を背景に生じているが,再認識の動きは,個々人のプライベートな問題経験をきっかけに,問題経験と結びついて発動し活性化する面が強いと解釈される。 (3)成果発表と研究のまとめ:(2)の大要を英文で論文化し,大学のセンター紀要に投稿し掲載された。また,この間の研究成果全体の概要を研究成果報告書にまとめた。
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