2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の夜間中学とその生徒:ポスト・コロニアルの東アジア社会変動論の視座から
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25380673
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浅野 慎一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (40202593)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 夜間中学校 / 東アジア / 社会変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦後日本の夜間中学校とその生徒の実態、及び、変遷を明らかにするとともに、散逸・劣化の危機に瀕している夜間中学校関連の厖大な一次資料を収集・整理し、電子媒体化することにより、将来にわたって研究者・関係者が広く活用しうる形式で保存し、適切な基準に基づいて公開することにある。 平成27年度は、主に4つの成果を得た。 ①DVD「60年の歩み:全国夜間中学校研究会大会史料集成-1954年度~2014年度」を刊行し、全国の夜間中学校、及び、その設置主体地域の教育委員会に頒布した。全国夜間中学校研究会は、全国の夜間中学校が結集する組織であり、その60年にわたる大会関係史料はいわば戦後日本の夜間中学校とその生徒の実態・歴史を把握するための最も基本的・総括的な一次史料である。本DVDには、166種の史料(PDF6751頁)を収録した。また収録に際しては、厖大な汚損・破損箇所を必要に応じ可能な限り電子的に修復・復元した。 ②既に廃校になった学校も含め、主に近畿・中国地方の個別の夜間中学校関係史料を収集・整理し、全国夜間中学校研究会との連携の下、それらの記録的・学術的・教育実践的価値を吟味し、約2300種の史料を電子媒体に加工して保存する作業を行った。 ③2015年11月4日、京都市立洛友中学校において全国夜間中学校研究会をはじめ、各地の関係者・当事者とともに本研究課題に関する研究会を開催し、討論を深めた。またメーリングリストで日常的に本研究課題の推進に関する会議・研究交流を実施した。 ④主に関東の個別の夜間中学校関係史料を1万種以上、収集し、既に入手した諸史料との重複・汚損破損状況、及び、電子媒体の必要性等に関する点検・確認作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、DVDによる公開は平成28年度に行う予定であったが、平成27年度に前倒しで実施することができた。またその前提作業として、著作権・肖像権等に十分留意し、当事者・関係者との緊密な協議をふまえ、公開基準を確定できた。これにより、公開を前提としない保存用データの選択基準も明確になり、最終年度である次年度の研究にも十分な見通しをつけることができた。 さらに当初想定していなかった電子的資料保存の専門家の全面的な協力の下、劣化・汚損・破損が著しい古い諸資料をかなりの程度、電子的に復元することができた。これは今後の当該分野の研究の中長期的推進にとって、大きな基盤を据える成果である。 また公開を前提とせず、主に劣化・散逸の危機から救済し、電子媒体として保存することを目的とした史料収集も、全国の諸機関・諸個人の協力の下、当初予定を大きく上回る規模で進展している。1950年代に夜間中学校に大きな足跡を残した故人の遺族からも貴重な史料提供を受け、従来、その存在が知られていなかった歴史的史料も多数、入手することができた。 研究の過程で、公立夜間中学校の学校数の変遷等の基本的な史実についても、従来の一般的認識の誤謬・限界を発見しえた。その他、各地域・個別学校の実態について得られた知見は極めて多い。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であるため、研究課題の完遂に向け、次の計画を実施する。 ①既に収集している数万種の文書の一つひとつについて、記録的・学術的・教育実践的観点からその価値を吟味し、保存に値すると判断できたものについて重複のない形で電子媒体化の作業を進める。また必要に応じ、追加史料を収集する。 ②電子媒体化した史料の検索・閲覧システムを構築し、利用可能な史料集成データとして完成させる。また昨年度とは異なり、本年度の電子媒体史料は、個人情報等との関係で公開を前提とせず、保存を主目的としたものである。そこで、全国夜間中学校研究会と連携し、長く保存できる管理体制、及び、限定的な公開・閲覧の基準等を構築する。 ③戦後日本の夜間中学校とその生徒の実態、及び、変遷を明らかにする総括的な研究報告・論文等を発表する。
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Causes of Carryover |
本研究計画の支出においては、歴史史料の電子媒体化の経費が大きな位置を占める。また電子媒体化する史料の冊数・頁数は膨大で、しかも冊子の場合、一定の纏まりをもっているため、微調整が難しい。その結果、本年度については18,855円の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はすべて、計画通り、歴史史料の電子媒体化の経費に充てる。なお次年度は本科研の最終年度であるため、経費の完全な計画的執行が行えるよう、微調整が難しい歴史史料の電子媒体化作業は、12月頃までに完了させる予定である。
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Research Products
(2 results)