2013 Fiscal Year Research-status Report
米国都市行政における市民事業体の準自治体化(PDA)のガバナンスの位相と法的構造
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25380691
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
前山 総一郎 福山市立大学, 都市経営学部, 教授 (80229327)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | PDA (公共開発機構) / PPP (公民連携) / CDC(コミュニティ開発機構) / 米国都市行政 / コミュニティ開発 / ネオリベラルアーバニズム / パイクプレイスマーケットPDA / SCIDPDA |
Research Abstract |
市民的ガバナンスと民間セクターの経営スキルを兼ね備えた「準自治体」という、極めて特有の制度的設定をもち、成果をあげているものとして、現在、「公共開発機関」(Public Development Authority ;以後PDAと略記)が米国における都市経営パラダイムシフトの最先端と着目されている。平成25年度は、PDAの根幹にかかわる「市民ガバナンスの位相」について焦点をあてて、調査を実施し、その結果を論文として公刊した。 まず、「公共開発機関」PDAとして代表的とされる団体のうちから、SCIDPDA団体およびPike Place Market PDA団体(ともにワシントン州シアトル市)にあって、それぞれ事業本部長(executive director)および事業担当者等に面会し、①理事会の権限と執行スタッフのありよう、②地域コミュニティないし関係公衆とのコミット、③PDA団体の形成過程と現行の問題点等について、ヒアリング調査をおこなった(5月、8月、1月)。 その調査結果に基づいて、PDAの「市民的ガバナンス」の位相についての二つの論文を刊行した。第一の論文(都市経営 No.4(2013),pp.43-55)において、市民的運動と活動およびNPO等の市民的組織の発展が、PDAの制度化にあっての基盤となっていることを示し、第二の論文(都市経営 No.5(2014),pp.25-39)で、PDAにあって市民的ガバナンスのミッションとしての有効な展開が、地区諸団体と関係者(小ビジネス等)の「組織化/組織網」と「アドボカシー」(資金調達支援等)の機能であることを示した。 もって、平成25年度において、「市民的ガバナンス」の制度化における基盤のありようと、それを裏打ちする実際的機能の有効性について調査に基づいて明らかにし、3年間にわたる本研究の基礎的作業を遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画の実施については、以下のことから、所期の研究計画はおおむね達成されていると捉えている。 〇現地調査をおこない、主要団体(Pike Place Market PDAおよび、SCIDPDA団体(Seattle Chinatown International District PDA)の、それぞれ事業本部長と次長担当者に直接面談し、ヒアリング調査をおこない、組織内ガバナンスの状況と、またPDAの地区コミット(小ビジネス者達、地区住民、PDAの所有ビルを借りるテナント)の状況を直接的に聴取できた。 〇上記に加えて、さらにPDAがサポートした小ビジネス者(Kobo店舗等)にもヒアリングをおこない、地区コミュニティの視点から見た、PDAの地区コミットの状況を把握した。かつまた、関連する財団的団体(4Culturesd団体)にもヒアリングをおこない、地区における他組織からの視点から見た、PDAの地区コミットの状況を把握した. 〇同調査に基づいて、論文2本(英文)を刊行した。(尚、2014年5月7日現在、機関リポジトリにおける上記第一論文へのアクセスは、472件に達している。)
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Strategy for Future Research Activity |
〇 平成26年度は、各準自治体団体の原則を定める設置書(charter)の収集・分析とヒアリングを通して、その法務的関係性を明らかにし、「市民ガバナンスの法的構造」の調査をおこなう。「市民ガバナンス(理事による統治)を基盤とする準自治体」たるPDAは、通常、12名程度の理事が当該PDAの目標設定、運営の方向性、スタッフの任免権を握る形で強力な「市民ガバナンス」をおこなうという独自の特色と構造がある。その法的構造の解明にむけて、第一に各機構の設置書(charter)につき、各準自治体ごとに可能な限り設置書および関連書類を収集し、かつ下記の調査項目の形でその構造を分析する作業をおこなう。また、関連の条例(基礎自治体および州政府)の調査をもおこなう。(〇設置の権源(州の設置権)、〇設置の経緯、 〇準自治体としての権能(所有権限や他の地方自治体(市や州)との関係性)等)。第二に、それを裏付けるために、PDA諸団体と自治体担当者へのヒアリングをおこなう。 これを通して、NPOとも、一般の自治体(一般目的政府)とも異なるところの、準自治体PDA独自の法的構造が明らかになると目される。 〇本内容に係る成果の発表としては、第一に、国際社会学会(International Sociological Association: ISA;同第18回世界社会学会大会)において、「ネオリベラルアーバニズムとPDA」のタイトルで研究発表をおこなう。第二に、研究誌において、本内容について、平成26年度中に研究論文の形で成果を公刊することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
刊行予定であった研究書(英文書籍数点)の刊行が遅れたため、次年度使用額として22,397円が発生した。 7月までに、当該書籍(刊行されたもの)を購入することを計画しており、速やかに「次年度使用額」を有効利用する。
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Research Products
(2 results)