2013 Fiscal Year Research-status Report
戦前期の愛楽園とその療養生活に関する実証的・理論的研究
Project/Area Number |
25380692
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
中村 文哉 山口県立大学, 社会福祉学部, 教授 (90305798)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 靑木惠哉 / 沖繩MTL / 服部團次郎 / 沖繩MTL相談所 / 沖繩愛楽園 / 三井報恩會 / 日本MTL / 林文雄 |
Research Abstract |
本年度の研究課題は、①愛楽園の開園前史の解明(課題I)、②愛楽園における療養生活の諸現実の解明(課題II)、愛楽園運営の実態の解明(課題III)、同時代の沖繩社会の生活誌の解明(課題IV)、沖縄県とらい予防法の関係(課題V)の基礎資料の収集であった。 課題①は、日本MTL(Mission to Lepers)と沖繩MTLの資料を主に、光田健輔・林文雄・宮川量らを中心とする長島愛生園が媒介となり形成された日本MTLと沖繩MTLの連携が、靑木惠哉の〈救癩〉活動への支援につながってゆき、この支援体制の下、更に三井報恩會からの協力・支援を引出すことにより、愛楽園の前身となる「沖繩MTL相談所」が解説された史的経緯について、明らかにした。 この知見を得たことにより、愛楽園は、私立「沖繩MTL相談所」に始まり、「沖繩縣立国頭愛楽園」を経て、国立療養所「沖繩愛楽園」と三つの経営母体が変遷した全国唯一の療養所であることの含意がみえてきた。その含意とは、これらの移行のそれぞれの時期において、運営経費の捻出や予算、更に運営方針は、大きく異なるという点である。従って、次年度以降、上記課題II・IIIに取り組む際には、この変遷時期を踏まえる必要があることになる。本年度は、今後の研究にとって、重要となる枠組を抽出することができた。 資料蒐集に関しては、課題IV・Vを中心に、「沖縄公文書館」等で行ったが、当初、想定していた資料にはなかなかアクセスできなかった。『沖繩日誌』『沖繩縣報』を中心に、アクセスポイントを絞り込む作業が必要になる。 課題Vの資料に関しては、内務省の衛生局に関するものの蒐集を試みたが、まだまだ関連資料の全体像を把握する段階には至っていない。次年度以降の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄で示したように、私立「沖繩MTL相談所」に始まり、「沖繩縣立国頭愛楽園」を経て、国立療養所「沖繩愛楽園」へ、という同園の移行、即ち私立・縣立・国立という愛楽園の成立事情の特殊性、及びそれらの経営母体の時期区分が持つ含意を、研究開始時には明確に理解していなかったため、課題Iは、簡単にクリアできるものと考えていたが、実情はそうではなかった。研究の基点となるこの点をしっかりとみすえることが、次年度以降の研究の展開において、重要であるとおもわれる。 課題II以下の資料収集は、沖縄戦禍のため、想定通り、やはり困難な面があることは否めず、今後は『沖繩日誌』『沖繩縣報』を中心に、アクセスポイントを絞り込むための作業仮説を理論的に検討し、文献・資料にアクセスしていくことが必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で指摘したように、国と沖縄縣、とくに内務省と同衛生局と沖縄縣の関係を明らかにする作業に着手するため、『官報』をはじめ、『沖繩日誌』『沖繩縣報』の資料蒐集に力をいれる。その際のアクセスポイントを理論的に検討し、絞り込むことが必要になる。そのためには、内務省関連の文献・資料の蒐集を行い、政治史、経済史、法制史の視点も取り入れつつ、内務省の歴史社会学的な研究に着手する必要がある。 今後は、これらの面を推進していきたい。その方策としては、やはり関連資料を広く渉猟するということに尽きるであろう。
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