2016 Fiscal Year Annual Research Report
Sociological Consideration on the history of "Kunigami Airakuen" before Okinawa War
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25380692
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
中村 文哉 山口県立大学, 社会福祉学部, 教授 (90305798)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハンセン病 / 沖繩MTL / 癩予防法 / 靑木惠哉 / 星塚敬愛園 / 日本MTL |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から持ち越した研究課題として、課題Ⅰの「愛楽園開園前史の解明」における「沖繩MTL」の活動に関する実証的解明を、課題Ⅵの「旧沖繩縣と『癩豫防ニ関スル法律』(癩豫防法)の関連」に関する研究につなげて考察し、ハンセン病療養所「愛楽園」の構築以前の旧沖繩縣時代における沖縄本島区でのハンセン病問題の社会的な位相を照射する研究を行った。 療養所をもたなかった時期の沖縄本島区においては、療養所の構築を前提とした法内容を持つ(1907年交付「癩豫防ニ関スル法律」を改正した)所謂1931年法の「癩豫防法」が想定していた「病毒伝播ノ虞アル」病者の療養所収容には程遠く及ばず、「療養ノ途ナキ」病者を対象に、浮浪病者を、扶養の義務を負う者の下へ送還させる1907年に公布された「癩豫防ニ関スル法律」に限りなく近い病者扱い方に留まったこと、そして病者およびその同伴者の保護に関しては、警察署員のみならず、「沖繩MTL」という民間キリスト教団体が関与したばかりか、この「沖繩MTL」というキリスト教民間団体は、沖繩本島区でのハンセン病療養施設の構築運動や「本土」への病者送致に関わるなど、「本土」各地のMTLとは全く異なる活動を組織化させていたことが、実証的に突き止められた。 この研究の中で、星塚敬愛園が、「沖繩MTL」との連携により達成させた沖繩ハンセン病者の、星塚敬愛園への船移送の過程を、実証的に追った。この船移送は、沖縄におけるハンセン病者の療養所収容の代替策であるが、小型の発動機船により、北西風(ミーニシ)が吹く時期の七島灘を越えていく危険を犯しての収容であり、ハンセン病者の船収容の問題点を、如実に体現させた航海となった。また離島での収容病者の組織化と集合の困難性も、指摘できる。これらの点で、離島区をもつハンセン病療養所に固有の苦悩が浮上する。
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