2014 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学的知識と病い経験の語りに関する概念分析的研究
Project/Area Number |
25380700
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
前田 泰樹 東海大学, 総合教育センター, 准教授 (00338740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 ユミ 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (00257271)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝性疾患 / 病いの経験 / 物語 / 概念分析 / エスノメソドロジー / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多発性嚢胞腎(PKD)という単一遺伝子疾患を生きる当事者と、その疾患に関わる遺伝学的知識を扱う側の医療者へのインタビュー調査を行い、病者の経験が新しい医学的知識のもとでどのように編成されているのかについて、明らかにすることを目的としている。H26年度は,中間段階として、ここまでの分析結果の一部を、日本保健医療社会学会大会およびQualitative Health Research Conferenceにおいて報告した。 当該報告では、当事者や医療者のどのような実践において、遺伝性疾患としてPKDが位置づけられてきたのか、またそのことによって、人びとの経験がどのように変化してきたのかについて、社会学的な記述を行った。PKDは、90年代における遺伝子解析研究の進展とともに、遺伝性疾患の一つとして明確に位置づけられ、それと同時期に、患者会が組織されるようになったものである。こうした状況下で、「自分たちの子どもの世代」に向けて知識を伝えていくという動機にもとづいて組織された患者会の活動において、「同じ病いの経験」が蓄積されてきた経緯を明らかにした。続けて、一つの家族の中、つまり「親」と「子」の間においても、「同じ」病いを生きているという理解のもとで、さまざまな経験や行為が可能になっていくことを示した。また、この経緯を「物語」という観点から記述した論文(「物語を語り直す」)を発表した。さらに、PKDの主要な治療である生体腎移植の経験についても、一つの家族の関係性の更新という観点から考察した。 また、本研究の遂行に関わる方法論的な論考を、「『社会学的記述』再考」というタイトルで発表した。この論考は、遺伝性疾患を生きる当事者たちの語りの事例を分析するさいに生じる、新しい概念のもとでなされる過去の遡及的再記述の問題について再考したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、H26年度においては、H25年度より開始された調査を継続しつつ、海外では、Qualitative Health Research Conference(Canada)、国内では、日本保健医療社会学会等で報告することが予定されていた。研究実績の概要に示したとおり、学会報告に加え、雑誌論文の寄稿も行うことができたので、当初の研究計画にそって、順調に達成されていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
原則的には当初の研究計画とおりであるが、2014年には、調査に協力いただいている多発性嚢胞腎の当事者にとって、新薬の適応拡大や、難病法のもとでの指定難病の承認など、重要な意味を持つ出来事が相次いだので、これらの意義についても、検討を加えていく予定である。また、研究成果については、各関連学会にて、順次報告していくほか、複数の書籍の一部として出版予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた調査の一部を延期したことにともない、調査旅費やテープ起こし代などの一部を使用できなかったため、若干の未使用額がでることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査旅費やテープ起こし、関連書籍などの予算として、早期から使用していく予定である。
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