2014 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアの地域文化形成における地方テレビ放送の役割
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25380701
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
内藤 耕 東海大学, 文学部, 教授 (30269633)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インドネシア / テレビ放送 / 地方 / 地域文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
スハルト政権後の改革の時代を経て急速に増えてきた地方テレビ放送について、それぞれの地域でどのような役割を果たしているか、とくに地域文化形成への関わりに力点をおいて研究を進めている。 第二年度は、初年度に引き続き地方テレビ放送へのインタビュー調査を中心に進めたほか、受け手への調査も行った。現地調査は8月および2月~3月にかけておこなった。連携研究者として倉沢愛子(慶應義塾大学)の協力を得た。 地方局へのインタビューでは、ジャカルタのテレビ局としてラジオ局から出発したエルシンタTVや仏教団体が運営する華人系DAAIなどの調査をおこなった。CMやテレビショッピングを収入源とする前者に対し、公共広告以外のCMを放送しない後者は、多局が乱立するなかでテレビ局を運営するには母体となる組織・団体が求められることを示唆している。スラバヤを中心とした東ジャワにおける調査においても同様に、新聞社が母体となっているJ-TVやイスラム団体であるNU(全国組織)が運営するTV9とその他の局では経営状況に大きな違いが見られた。西カリマンタンの状況も同じで、ダヤク系のユニークなテレビ局ルアイTVは有力NGOによって運営されていたのに対し、財政基盤の弱いテレビ局はジャカルタの全国民放による事実上の買収・提携が進んでいた。こうした状況下で、地方テレビ局はたとえば自治体との協力に力を入れている。つまり、実質的な広報番組を放送することで自治体から収入を得ているのである。 放送局が独自に地域の文化を形成していこうとする理念はたしかにどこにおいても明確化されている。しかし、実態としては中央のネットワークに入ったり、テレビショッピング(その多くはとくに地域色もない商品)によって消費文化を広めたり、あるいは自治体主導の地域文化形成に堕してしまったりといった状況にあることが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初調査対象と考えていた西カリマンタン州サンバス県のサンバスTVが閉局となっていたなど、予期していなかった問題も生じたが、ジャカルタ、東ジャワ州、バリ州、西カリマンタン州で集中的な調査を行うことができた。これにより地域に対して地方テレビ放送がどのような関係を構築しているのか、とくにその限界をあきらかにすることができた。よって26年度は概ね所期の目的を達成していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は26年度に引き続き受け手側の調査にも力を入れていく。また、最終年度でもあり、フォローアップとともに一部成果の報告にも注力したい。
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Causes of Carryover |
調査を8月1回のみと予定していたところ、校務の関係で8月と2月の2回となったことなどから若干の未使用が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査をより充実させるために調査日程を長めに計画することで消化可能となる。
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