2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380703
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田嶋 淳子 法政大学, 社会学部, 教授 (20255152)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国系移住者 / 移民第二世代 / 文化的市民権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度当初の計画では、トロントにおける中国系移住者第二世代の状況を中文補習学校において調査する予定であった。しかし、トロント大学の研究協力者の都合で1年先送りせざるを得ないこととなった。このため、急遽予定を変更し、バンクーバーにおける調査を実施した。 バンクーバーはカナダにおいて、トロントについで中国系移住者の多い地域である。特に、バンクーバー郊外のリッチモンド市はバンクーバーに通う郊外電車の終点でもあり、空港にも近いという地理的な利点から中国系移住者が集住している。18万9千人のうち、5万4700人あまりが中国系(言語区分で広東語および中国語)と考えられる。全体の28.9%を占める。 今回の調査では、教会関係者のネットワークを通じ、中文補習学校に通学経験のある中国系移住者第二世代4名にインタビューを実施した。彼らはいずれも公立学校に通う中学生および高校生であり、国籍はいずれもカナダである。中国語の学習は父母の強い進めのもとで選択されており、自らが希望して通ったわけではない。また、学校の授業が忙しくなるにつれて、中国語学習は彼らの負担となっている。こうした状況の中で、カナダにおける補習学校教育は筆者らがメルボルンで実施した調査とは異なり、拡大傾向にあるわけではない。 また、移住第一世代の定着という面では成人を対象とするさまざまな取り組みがエスニック・コミュニティを中心に展開されている。こうした成人に対する言語教育、定着に到る住宅、社会保険などの手続きサービスといった点ではきわめて周到かつ十分になされている。これらのサービス利用にあたって、対応は母語を用いて、可能であり、文化的市民権として、移住者の第一言語が公用語ではないものの、文化的資源として活用可能な状況にある。移住第二世代に対する対応についても、さらなる考察が必要と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は研究協力者のビザ問題で、カナダへの渡航自体が難しく、今年度はトロント大学における研究協力者の不在で、トロントにて行う予定であった調査の実施が延期された。これらの要因により、オーストラリアとの比較研究として実施する予定であった研究計画が大幅に遅れ、見直さざるをえなくなっている。オーストラリアにおける調査も当初シドニーで実施する予定であったが、全体の計画の遅れとともに、準備が進まず、これらの調査をすべて最終年度である2015年度1年間で実施可能かどうかを検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年は最終年度でもあり、オーストラリアにおいて実施した中文補習学校での調査票をカナダにおける調査に若干手直しをした上で用い、中文補習学校に通う移民第二世代のこどもたち(特に中高生)を中心として、母語の習得とアイデンティティとの関連を明らかにしたいものと考えている。
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Causes of Carryover |
2014年度はトロントにおける調査を予定しており、その場合、調査助手1名を雇う予定であったが、研究協力者の都合により1年延期せざるを得なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度において、調査助手1名を北米にて雇い、トロントでの調査を実施する予定である。そのための資金として、2014年度に残った金額を充当する。
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Research Products
(2 results)