2014 Fiscal Year Research-status Report
農村社会の持続的発展と村落自治―ジャワ農村の地方分権化と村落行政組織再編の研究―
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25380708
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
黒柳 晴夫 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (80097691)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インドネシア・ジャワ農村 / 地方分権化 / 村落自治 / 住民自治 / 民主化 / 村長選挙 / 村落行政組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシアでは、1995年の9・30事件によって登場したスハルトによって、中央から地方の村落社会の末端に至るまで統制と動員による翼賛的な統治体制が構築されてきた。そのスハルトの中央集権的権威主義体制が1998年の「5月政変」によって終焉を告げたことによって、地方と地方住民の権益を重視した地方分権的民主主義への転換が始まった。そこで、本年度の研究課題のひとつとして取り組んだのは、ポスト・スハルトの民主化への潮流が生み出されてきた経緯を明らかにすることである。その成果は、学部の紀要に「インドネシアの5月政変の経過と背景に関する若干の覚え書き」にまとめた。 もうひとつ取り組んできた課題は、スハルト退陣後地方分権的民主主義への転換が一気に進められてきた経緯とその過程で生じてきた問題点、および今後の課題を明らかにすることであった。スハルト体制下の「1979年村落行政法」に代わって、地方自治を確立するために民主化と多様化を志向した「1999年地方行政法」が制定され、さらにその行き過ぎた民主化を見直した「2004年地方行政法」が制定された。昨年度はこれらの法令の内容や制度設計の比較検討を行い、その成果を論文にまとめて公表してきた。そこで、現行の地方行政法の下で民主化と地方自治がどのように実質化されているのかを明らかにする取り組みをした。その具体的な事例として、ジャワ農村における村民の村落行政に対する意思表明の自由度や投票などによる参加度に着目しながらジョクジャカルタ特別州のバントゥール県内で村長選挙の実態調査を実施し、その成果をまとめた「2004年地方行政法下の村落自治と村長選挙」を大学の研究論集に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究では主に地方自治法の検討と、ジョクジャカルタと区別州内を事例として村落自治や村落行政に関する県議会条例や県知事令の検討をしてきた。本年度は、スハルト退陣後の民主化と地方分権化が一気に進んだ背景をあきらかにすることと、それらの法令の下で民主化がどのように実施さられているのかを、事例研究を通して明らかにすることであったが、いずれもほぼ予定通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
インドネシアでは一方で経済発展を実現しつつも、他方で地域間格差が拡大する状況下にあり、ガバメントが多様化、肥大化する社会を維持できなくなってきている。政府による上からの住民管理の体制が後退し、逆に住民の参加する多元的主体が行政をより効率的で透明性のある組織に改変していく圧力を生んできている。その成否を握るのが住民の自立化とそれにともなう地域社会やコミュニティの活性化である。そこで、最終年度は地方と地方住民の権益を重視した村落自治の組織化を検討するとともに、これまでの成果をまとめて出版助成の申請をする。
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Causes of Carryover |
上記費目別収支状況には計上されていないが、平成27年3月14日~25日にインドネシアのジャカルタとジョクジャカルタに本研究課題の学術調査に再度出張し、上記次年度使用額分を使い切った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年3月14日~25日にインドネシアのジャカルタとジョクジャカルタに本研究課題の学術調査に再度出張し、上記次年度使用額363,422円を使い切った。
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