2014 Fiscal Year Research-status Report
EUにおけるレイシズムの新展開と社会構造の比較研究――英・仏・蘭の事例から
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25380712
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
菊池 恵介 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 准教授 (70536945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 千香子 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10410755)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レイシズム / 差別・排除 / 多文化共生 / 植民地主義 / グローバル化 / 福祉国家 / 新自由主義 / 国際研究者交流(フランス、アルジェリア) |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、レイシズム関連の文献・資料・データを収集し、英・仏・蘭の三か国の比較研究に向けた基盤作りを進めた。とくに上半期は、研究代表者が在外研究でフランスに滞在していたため、専門家のヒアリング調査などを精力的に行った(パリ第8大学のエリック・ファサン教授、パリ第10大学のアブデラリ・アジャット准教授、フランス国立科学研究センターのマルワン・モハメッド研究員、オルレアン大学のルイ=ジョルジュ・タン准教授、アムステルダム大学のインネケ・ヴァン=デル=ヴァルク教授、ロンドン大学のアブドゥールカリム・ヴァキール教授など)。さらに、パリに本部をおく反レイシズム団体や移民支援団体を訪問し、数回にわたって聞き取り調査を行った(「イスラムフォビア対策協議会(CCIF)」、「フランス黒人団体評議会(CRAN)」など)。また4月には、パリ政治学院「ヨーロッパ研究センター」で、日仏のレイシズムの現状と課題に関するワークショップを開催した。 日本に帰国した下半期は、収集した文献や資料の精査・精読の作業を続けるとともに、フランスで行ったヒアリング調査の整理に取り組んだ。また11月には、パリ第10大学のステファン・ボー教授(社会学)を一橋大学に招聘し、フランスのスポーツ界におけるレイシズムの現状に関する講演会を開催した。3月下旬には再びフランスに渡航し、7月に日本で予定しているシンポジウムの打ち合わせをするとともに、世俗主義とイスラームの間で揺れるマグレブ諸国の政治状況に関して、チュニジアで現地調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施目標は、①関連文献・資料・データの収集、②収集した資料の精読と整理、③中間報告を兼ねたワークショップを年度末に開催することであった。①と②に関しては、研究代表者が4月から8月末までフランスに滞在していたことから、効率的に作業を進めることができた。とりわけ、イスラムフォビアに関する研究者の国際的なネットワークに参加したことから、欧米の研究者との交流が一挙に拡大した。ただし、収集した情報が多く、その整理に予想以上の時間がかかったため、帰国後に予定していた企画は、11月に一橋大学で開催したステファン・ボー教授(パリ第10大学)の講演会にとどまり、ワークショップの開催は見送った。その代わりに、次年度に海外研究者を2名招聘し、同志社大学でシンポジウムを開催する。以上、ワークショップの開催は見送ったものの、前半のフランス滞在を通じて予想以上の情報が収集できたことから、研究は概ね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究の総括を行う。まず、調査結果を整理し、最終的な分析・検討をくわえて、新たなレイシズム理論の構築を目指す。また、その成果報告として、7月に海外研究者を2名招聘し、東京と京都でシンポジウムを開催する。そして年度末までに、研究の成果をまとめた報告書を作成し、その刊行を目指す。とりわけ、7月のシンポジウムでは、植民地期以来の西洋におけるイスラムフォビアの系譜をたどるとともに、日仏の反レイシズム運動の課題を検討する。また、この機会に海外研究協力者と協議し、国際的な共同研究に向けた構想について話し合う。
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Causes of Carryover |
本年度は、予定を上回る量の関連文献や資料を収集することができたため、その精読や整理に時間がかかり、年度末に予定していたワークショップを次年度に持ち越すことになった。そのため、海外研究者の招聘費用(旅費、人件費、資料の翻訳費など)を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度7月中旬から下旬にかけて2名の海外研究者を招聘して国際シンポジウムを開催し、繰り越し予算を執行する。
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