2013 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化・少子高齢化時代の親-成人子関係についての実証的研究
Project/Area Number |
25380721
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大和 礼子 関西大学, 社会学部, 教授 (50240049)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / 親‐成人子の世代関係 / グローバル化 / 少子高齢化 / 性別分業 / 男性稼ぎ主モデル / 父系 / 双系 |
Research Abstract |
本研究の目的は、グローバル化・少子高齢化の進展を背景に、①成人子世代における性別分業の変化は、親-成人子の世代関係にどのような影響を与えるか、②「子世代における新しい分業」と適合的な「親-成人子の世代関係」とはどのようなものか、③両者を支えていくための社会制度とはどのようなものか、について明らかにすることである。このために以下の研究を行った。 (1)本研究の分析枠組みをより明確にするために論文を執筆し、学会誌に発表した。 (2)成人子世代における性別分業がどう変化したかを明らかにするために、女性の結婚・出産期の就業について分析し、和文と英文の論文を執筆した。分析の結果、日本型雇用システムの変化(若年の非正規化、女性の就業支援制度の拡大)により、1990年代までと比べて2000年代以降、結婚・出産期に就業を継続しやすい層(正規雇用など)としにくい層(非正規雇用など)の2極化がおこっていることがわかった。したがって親-成人子の世代関係においても、2つの層の違いを念頭に分析していく必要があることがわかった。 (3)親-成人子の世代関係を介護の側面から見るために、介護保険導入前と後で人々の介護意識がどう変化したかについて分析し、論文を執筆した。分析の結果、介護保険によって、介護してくれる家族がいない人はフォーマル(専門家による)介護のみに頼るという意識が高まり、家族がいる人はフォーマル介護とインフォーマル(家族)介護を併用するという意識が高まった。家族がいるにもかかわらずフォーマル介護にのみ頼るといった傾向(Crowding-outと呼ばれる)は強まっていなかった。したがってフォーマル介護とインフォーマル介護のより良い組み合わせを探っていくことが重要であることが確かめられた。 (4)相続についての文献レビューを進め、近年、相続についての意識と行動が変化し紛争が増えていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標とした分析が進んでおり、分析したもののうち1つは本年度に発表できたし、他の2つは出版に向けての作業中であり次年度に出版予定である。また分析結果から、今後の分析において新たに注目すべき変数が見つかったことも有意義だった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては次のような研究を行うことを目標とする。 ・親-成人子の世代関係について、複数の側面(介護・育児などの世話的支援関係、経済的支援関係、同居、相続など)を総合するようなレビュー論文を執筆し、個々の側面についての実証分析の、相互の関連付けを明確にする。 ・親-成人子の同居・近居についての分析を行う。また日本だけでなく、他の東アジア諸国との比較分析も行う。この結果を学会で発表する。 ・相続についての研究レビューを、日本だけでなく海外の文献についても行う。 ・介護と相続の関係について、現代の高齢者とその親世代を対象に分析を行う。そしてその結果を、現代の高齢者とその成人子世代との分析結果と比較し、この間の変化について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)海外で学会報告をするための旅費等に使う予定であったが、学会の報告要旨を提出した結果、招待報告に選ばれ、学会を行う研究機関が旅費を負担してくれることになったため。 (2)論文を英訳するための費用として使う予定であったが、分析対象を日本だけでなく台湾など他の東アジア諸国に拡大したため、現在、その拡大部分の分析・執筆中であり、本年度中に翻訳を行うことができなかったため。 (1)海外での学会報告や、海外の研究者との研究計画の相談を行うための、旅費として使用する予定である。 (2)上の(理由)欄の(2)に示した論文を英訳するための費用として使用する予定である。
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