2014 Fiscal Year Research-status Report
戦前における労働者スポーツに関する歴史社会学的研究
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25380723
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高井 昌吏 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (20425101)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / スポーツ / 近代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大正時代から戦時期における工場労働に着目し、その代表として工場体育の歴史的意義を考察することである。学校体育や競技スポーツの歴史だけではなく、本研究では、工場労働者のスポーツ実践に焦点を当て、そこにみられるキリスト教(プロテスタント)の布教活動(YMCA・YWCAなどの思想・実践)、ジェンダー(工廠の男性労働者と紡績工場の女性労働者)、階層のポリティクス(工場スポーツと学校スポーツ)、工場スポーツの地域性などを検証する。 平成26年度は戦前期(大正時代後期から昭和20年ごろ)の体育専門誌(『アスレチックス』『オリンピック』、『体育日本』)などで、当時の体育思想の状況を検討した。そして、文部省・厚生省などに関する資料を収集し、国家の政策と社会体育の関係を調査した。さらに、年度末には、戦前の地方スポーツの調査に乗り出し、そのなかでも軍都、具体的には広島(広島市、呉市)に焦点を当て、広島公文書館や広島市役所においても資料を収集した。 学会(「日本スポーツ社会学会第24回大会」2015年3月)までにその成果をまとめるまでには至らなかったが、労働者スポーツの地域性や階層性、あるいは軍との関わりを明らかにするための重要なデータを得たと考えている。 なお、戦前期の女性の工場スポーツから連続している「戦後の女性スポーツ」に関しては、岩見和彦編『続・青春の変貌』(関西大学出版部、2015年2月。担当は、「ママさんバレーというメディアイベント―『主婦の青春』と地域スポーツから考える一九七〇年代」(P48~P78)にて、まとまった論文を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既述のように、全体的に研究はおおむね順調に進んでいる。やや遅れているのは、平成25年度から26年度にかけて集めた、工場体育に関する資料の分析である。平成27年度はこれらの分析を行い、分析結果を「戦前の工場スポーツのポリティックス」(仮)という形で、「日本スポーツ社会学会第25回大会」(2016年3月)において発表したい。これによって、分析精度をさらに高め、3年間の研究の集積を著書(いまのところ青弓社と出版交渉をしている。論文発表というケースも考えている)として公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、戦前の軍都に焦点を絞り、残りの必要な資料を収集し、さらなる分析を行う。具体的には広島市、広島の呉海軍工廠、広島YMCA等の資料を検討する。ここで、労働者スポーツの地域性や階層性、あるいは軍との関わりを明らかにするための重要なデータを得る。それによって情報収集・分析に厚みを加える予定である。 さらに、平成25年度から入手した資料の分析結果をまとめる。労働者スポーツの実態を地域の歴史(戦前)や日本全体の状況と照らし合わせつつ、思想および実践の両側面から整理する。ジェンダーや階層といった視点はもちろんのこと、戦前・戦時期における社会体育の実態および意義について、各工場・企業における当時の状況(労働争議など)なども総合しつつ、検証する。
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Causes of Carryover |
学生引率などの校務のため、出張調査の回数が予定よりも数カ所減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に十分なデータ収集ができなかった地域(広島市、呉市)などへ出張し、資料取集やインタビュー調査を行う。また、野球体育博物館内の図書館(東京ドーム内)や国立国会図書館で、資料を補足する。
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Research Products
(1 results)