2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380733
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
小早川 明良 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, その他部局等, 研究員 (10601841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 成俊 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, その他部局等, 研究員 (20605026)
伊藤 泰郎 広島国際学院大学, 情報文化学部, 教授 (80281765)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 部落産業 / 少数点在型部落 / 屠畜 / 製革 / 製靴 / 竹製品 / 観念の構成 / 部落問題の「科学的」研究 |
Research Abstract |
「部落産業」とされる産業(群)の特定から本研究を始めた。そして、屠畜業、皮革(製靴)業、竹製品生産業を調査研究対象とした。それらについて、公的統計資料を集めた。他方、一般市民が抱いているこれら産業についての観念を、インタビューによって調査した。 少数点在型被差別部落への調査については、いわゆる「未組織」を中心に7カ所の被差別部落へ調査を行った。広島県内の諸「部落実態調査」から、産業・職業調査について、9市町村、約30カ所のデータを収集した。地域的比較のために東京都、浅草でも調査を行った。 その結果、研究が対象としたフィールドでは、「部落産業」が、被差別部落コミュニティの文化はおろか、生活の基底とならないとの結論に十分なデータが得られた。「貧困」と「原始」や「野蛮」など「部落産業」と結びついた被差別部落に関する観念は、歴史的には、戦前の政府、大企業、融和運動などの見解と近く、これらの分析は、研究の目的達成にとって合理的であると判断した。 一方、当研究が重視した、「部落問題の『科学的』研究」は、一定の傾向をもつ地域の特徴ある被差別部落に限られていることがほぼ明らかになった。今日までの「部落産業」研究は、偶然であったにせよ、それら産業が特徴である地域を抽出して分析した結果を普遍的な被差別部落の状況であるかの言説を構成したと言える。 研究実施計画の進捗については、1、政府、地方自治体、融和運動団体の精読は、順調に進んだ。2、1に加えて、新たな資料については、国会図書館、国立公文書館、地域図書館、公文書館に出張し、収集した。3、ひょうご部落解放・人権研究所、(社)部落問題研究所、東京部落解放研究所、昭和女子大学などで資料閲覧するとともに、研究者への助言を仰いだ。なお、天野卓郎氏資料は未読である。導入部としてあげた論文は現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「一般市民が抱いてきる部落民像」のインタビューへ協力が予想以上に得られた。一般市民がどのように「部落産業」や被差別部落についての観念を形成し、それをどのように「利用」しているか、を聞くことができたことは、当研究の進捗に有益であった。 少数点在型の被差別部落と「部落産業」のフィールドワークは、困難であったが、当事者の協力が得られ、いわゆる未組織の被差別部落の職業についても一定の調査ができた。また、被差部落民個人個人が、「部落産業」について、また、「部落産業」についている一般市民の観念について、どのように考えているのかも聞くことができた。 資料の収集が順調であった。「部落産業」と言われる生産活動が、一般地域でも行われたことを示す資料を入手できたことも成果であり、論文執筆の準備は概ね整った。 研究の進捗ついての問題点は、(社)部落解放・人権研究所の事情により、所有する資料閲覧できなかったことである。それを補完する方策をとった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度研究が、概ね計画通りに進んだので、平成26年度の研究は、当初計画に則り実施する。ただし、研究の目的と直接関わりが薄い項目には修正を加える。 1 資料の検討と概念の定義:2013年度に調査収集した資料の再解釈を進める。また 、それを通して、部落問題研究において使用されてきた曖昧な概念を再定義する。 2 被差別部落のフィールドワーク:すでに前倒しして実施した被差別部落民を対象とする生活実態に関するインタビュー調査をさらに補完する。それは「部落=屠殺」、「部落=芸能」なと、被差別部落を「野蛮」や「プリミティブ」という観念を形成した「科学的言説」を当事者として、具体的にどのようにとらえているかに焦点をあてる。 3 研究批判:「部落産業」と被差別部落民についての観念やスティグマを一般の市民がどのように形成してきたのかを被差別部落民自身の見解を考慮しつつ考察する。また、本研究の柱でもある、部落問題研究 の権力性を具体的に検討する。被差別部落民に対する権力性、一般市民に対する権力性、さらに「語りの序列化」という部落問題研究がもたらした問題点についても、研究のもつ構造的な問題点を浮き彫りにする。被差別部落にも知識人がいる。かれらは、従来の部落問題研究に少なからず疑問をもっている。それが表面化しないのはなぜか。かれらの沈黙の意味も検討する。 4 調査成果の中間発表: 研究2年目は、多様な被差別部落の「部落産業」とは関わりのないもうひとつの姿を明らかにしたい。また、2014年度中に、論文として成果を出したい。
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Research Products
(1 results)