2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380733
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
小早川 明良 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, その他部局等, 研究員 (10601841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 成俊 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, その他部局等, 研究員 (20605026)
伊藤 泰郎 広島国際学院大学, 情報文化学部, 教授 (80281765)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 少数点在型部落 / 屠畜 / 竹製品 / 製革 / 製靴 / 観念の構築 / 部落問題の「科学的」研究 / 部落弾業 |
Outline of Annual Research Achievements |
この3年間研究テーマに即して、被差別部落がいわゆる「部落産業」と歴史的・文化的に密接に結び付いているという言説を実証的に批判した。それは研究当初の目論見どおり、構築された観念であった。それを構築したのは、「科学的」部落問題研究であった。屠畜、皮革産業、竹細工などのどれを採り上げても、一部の地域を除いて、歴史的にも非被差別部落での生産関与が大きかった。被差別部落の皮革業経営者もいたが、ある人たちは「部落産業」など存在しないと明言した。農村部被差別部落における竹細工は、敗戦前、国家によって構築物された。それは、一般の村落と同様であった。 このことは、なにより既成理論の内在的批判、すなわちそれらが依拠した文献資料の再検討と広島県内を中心としたフィールドワークで明らかになった。明治以降の広島県を見るかぎり、屠畜場は被差別部落の如何を問わず建設されてきた。皇紀2600年記念事業として建設された屠畜場もあった。軍都として有名な地域では、市中の製靴・販売業のすべてが非被差別部落の経営者であった例もある。また、別の中堅都市では、同業種を経営する人の半数以上が、非被差別部落出身者であった。近隣に被差別部落がない地域の靴販売業者は、その地域経済活動の自然的所産であった。竹細工についてはもっと明確で、一部の研究者や当事者が、文字通り竹細工と被差別部落物語を創造し、それを「事実」として提示し保存した。そこには、公的出版物での意図的な事実の捏造も見られた。 従来研究は、被差別部落民の多様性を唱えつつ、現実的には一つのカカテゴリーに被差別部落民を押し込めた。当事者運動の政治的テーマに研究者が無批判的に容認、依拠してきたからである。それは、部落問題研究が、当事者を背景としたエコノミーであったからである。 本研究は、「部落問題についての『科学的』言説批判研究ノート」として232ページにまとめた。
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Research Products
(6 results)