2015 Fiscal Year Annual Research Report
福祉の市場化におけるソーシャルワーク実践のあり方に関する研究
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25380744
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
和気 純子 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (80239300)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高齢者福祉 / ソーシャルワーク / 介護の市場化 / 社会的排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
介護の市場化によるソーシャルワーク実践への影響について、2013年に実施した介護保険事業所(在宅400ヶ所、施設400ヶ所)の運営責任者に対する意識調査の結果をとりまとめ、共同研究者らが実施した韓国側データとの統合を図り比較分析を実施した。分析にあたっては、ル・グランらの先行研究を参考に①公平性、②選択性、③応答性、④効率性、⑤サービスの質からなる5つの指標を作成した。比較研究の結果は、2015年10月にタイ・バンコクで開催された第23回アジア太平洋地域国際ソーシャルワーク会議で報告するとともに、2016年2月に刊行された日本社会福祉学会学会誌『社会福祉学』56-4号に論文が採択・掲載された。 さらに、2016年2月に関東一都六県の特別養護老人ホーム(500ヶ所)および老人保健施設(500ヶ所)の相談員(ソーシャルワーカー)を対象に郵送調査を実施し、福祉の市場化の実践への影響について尋ねた。その結果、それぞれ197ヶ所、177ヶ所から有効回答を得た。市場化による影響を利用者のクリームスキミング(逆選択)という観点から7つの項目で尋ねた結果、「同一法人利用者の優先」「在宅復帰可能者の優先」「身寄りのない者の優先」「経済的困窮者の優先」「利用者のニーズ本位での入所」の5つの項目で施設種別間の有意差が認められ、いずれも老人保健施設において社会的排除がより深刻であることが判明した。相談員が抱くジレンマにおいても「利用者の退所支援」「法人経営者との協働」の2項目で老人保健施設の相談員のジレンマがより深刻であった。さらに業務を妨げる要因として「家族の問題」と「営利優先の経営管理」に有意差が認められた。 これらの結果から、介護の市場化が事業者の運営意識のみならずソーシャルワーク実践にも少なからぬ影響をもたらし、貧困や身寄りのない高齢者の社会的排除が存在していることが明らかいなった。
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Research Products
(7 results)