2013 Fiscal Year Research-status Report
医療観察法が精神保健福祉士の価値に与える影響に関する研究
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25380747
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
樋澤 吉彦 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (10329352)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / 精神保健福祉士 / 心神喪失者等医療観察法 / 精神保険福祉法 / 精神医療 / 狂気 |
Research Abstract |
平成25年度は本研究課題の目的に沿って2つの研究活動を行った。一つは医療観察法に関する文献等の収集と整理である。論考は主に「NII論文情報ナビゲータ(サイニィ)」及び「メディカルオンライン」において検索・収集を行った。当該年度までに検索・収集可能な医療観察法関連論考は2013年末現在、論文だけで約900編存在する。それらについて「医療(看護含む)」「司法」「福祉」の3領域に分類し、さらに執筆者の研究実践領域ごとに分類したうえで、医療観察法に関する主要論点ごとに論考整理メモの作成を行った。特にソーシャルワーカー(主に精神保健福祉士)の医療観察法への関与の実際に関する論考について先行的に整理検討を行った。但し以上については何らかの成果物として作成発表するところまでは至らなかった。 もう一つは、当初研究計画では次年度以降に実施する予定であった「精神障害当事者」による論考収集と分析について、先行して当該年度に実施した。具体的には「精神病」者を「なおす」ための種々の方法・技術の根底に潜む健常者性を顕在化させたうえで、社会によって「病」化された狂気を逆に貫徹することを種々の論考を通して志向した人物である「吉田おさみ」(1931‐1984)の狂気論の検討を行った。吉田は狂気を健常者社会に対する対抗原理として位置付けた。そして「狂気の貫徹」の志向こそが治療/支援であると結論付けた。同時に吉田は「病の症状」としての純粋な苦しみ辛さの存在を認めてもおり、自らが志向した狂気を減退させる「危険」性を承知のうえで、その苦しみ辛さの除去に限定した一定程度の治療/支援をやむなく承認してもいる。医療観察法が精神保健福祉士に与える影響を検討するうえで、いわゆる反保安処分の立場の当事者である吉田による狂気論の検討は重要であると考え、先行して検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画の即して厳密に言えば、平成25年度は医療観察法制定までの経緯及び日本精神保健福祉士協会の当該法への関与過程に関する資料収集と分析としており、その意味においては概ね予定ではある。しかし上記事項の一定の成果に関して論考もしくは学会発表の形で公表するつもりであったため、その点において当初計画よりはやや遅れているという評価となる。 但し上記の遅延の原因の一つは研究実績概要で記載した通り当初研究計画では次年度以降に実施する予定であった「精神障害当事者」による論考収集と分析について、先行して当該年度に実施したことが挙げられる。さらに後者に関しては出来うる限り多くの関連研究者からの批評を期待して発表先の吟味を行ったため、結果的に当該年度中は別に記載の通り学会発表に留まった。但し後者に関しては次年度以降に関連研究雑誌に学会発表を基礎とした論考の掲載が決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は今年度(平成25年度)中に収集した論考分析と成果報告を行う予定である。特に精神保健福祉士が医療観察法において担うこととなった「精神保健参与員」及び「社会復帰調整官」の業務の性質関する論考を中心に整理検討を行う。成果報告は学会発表もしくは論文投稿を計画している。 当初計画で実施予定である医療観察法廃止運動に携わる関係者に対するインタビュー調査についてはやや困難な状況であるが、本課題年度内での実施可能性について26年度中に結論を出す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料収集及び成果発表として国内旅費品目で10万円を計上していたが、決定金額を鑑み、成果発表のための学会出張分(日本社会福祉学会・北星学園大学)については所属機関の研究費にて執行し、科研費については資料収集に特化したため、当該余剰が発生した。なお国内資料収集出張は勤務先業務の都合で実施できなかった。 余剰金は設備備品(関連文献購入費)に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)