2015 Fiscal Year Annual Research Report
フランス「福祉国家」の再編の方向-貧困対策とくにアクティベーション策の行方
Project/Area Number |
25380752
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
都留 民子 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (00236952)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フランス / 失業 / 貧困 / アクティベーション / 福祉国家 / 新自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
リーマンショック後ー大不況下のアクティベーション策の変容と効果について、現地調査(職業紹介所・参入支援アソシアシオン・失業者組織など)、および失業・貧困関連統計に基づき分析した。(1.雇用政策ー労働市場の規制緩和・労働コスト低下・国庫補助雇用 2.失業の個別化策individualisation 3.所得保障・その他サービス) (再登場した)社会党政権はサプライサイド重視の税制・労働の規制緩和を特徴とする雇用創出策を継続しているが、貧困対策の複数年プログラム・不安定雇用の一定の防止策(「雇用安定化法」)も着手した。失業給付に関しても、求職活動の確認・個別コントロールは強化される一方、不安定労働者の給付へのアクセスが有利になる策がすすめられることになった。また、長年購買力が低下していた扶助額(とくに稼働年齢層のRSA)も継続的に引き上げられ、扶助受給世帯は360万世帯・人員扶助率は10.7%となった。国庫補助雇用の拡大も失業・貧困世帯の所得保障の(大きな)一助と考えらえる。 求職者登録数600万人(2005年初頭)を超え、失業率は10%強は続いている。ただし貧困率(OECD/所得中央値)はリーマンショック後(2009年)7.1%から2014年8.1%へと上昇でしかない。国立統計局INSEEの所得調査(2013)によると下位10%の所得は、リーマンショック後に僅かだが上昇し、上位10%との所得格差も若干低下し、さらにジニー係数の低下もみられるなど「1996年以来、見たこともない動き」と評される。 フランスのアクティベーション策は、「失業の権利」を無効にする、つまり「保障」を犠牲にした就労復帰策に専横されていない。「福祉国家」体制のネオ・リベ的変容はなしとげらえていないと結論した。
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