2015 Fiscal Year Research-status Report
児童虐待発生リスクに応じた要保護児童対策地域協議会の機能強化とチームマネジメント
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25380754
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
松宮 透高 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (10341158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 聡子 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (30582382)
八重樫 牧子 福山市立大学, 教育学部, 教授 (80069137)
西村 いづみ 県立広島大学, 保健福祉学部, 講師 (90405522)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 要保護児童対策地域協議会 / メンタルヘルス問題 / チームマネジメント / ケースマネジメント / 精神保健福祉士 / 子ども虐待 / 研修プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度において取り組んだ研究の第1は、平成26年度末より引き続いて要保護児童対策地域協議会への調査を実施した。具体的には、要保護児童対策地域協議会の調整機関職員を中心に関係する専門職を対象とした研修会を企画し、これまでの調査で明らかになった子ども虐待と親のメンタルヘルス問題に関する知見を伝達した。この機会を利用して、2種類の調査を実施した。1つは、質問紙調査である。メンタルヘルス問題のある親と子ども虐待との関連性に関して、回答者の属性、要保護児童対策地域協議会への参画度合い、当該事例に関する研修受講状況、研修ニーズ、支援に際しての認識、精神保健福祉士の機能に対する認識などの認識について回答を得た。もう1つは、小グループでのディスカッションとカードワークによる調査である。要保護児童対策地域協議会での活動や討議事例支援に関してブレインストーミングを行い、各自の発言内容をカードに清書する。その上で内容ごとにカテゴリー化していった。この形式の調査を中国5県の担当課の協力を得て実施したほか、沖縄県・山口県・鳥取県の精神保健福祉士協会でも実施した。さらに単県で社会福祉士会、助産師会、家庭相談員会、保育士会、児童館職員の研修会でも行った。さらに多職種合同の研修・調査を沖縄県と愛媛県で実施した。 第2は、先駆的な支援活動例の調査である。沖縄県糸満市の要保護児童対策地域協議会の調査を通じて知ったNPO「いっぽ」の活動を詳細に調査し、そこに全国でも応用可能と思われる官民連携による子ども養育世帯への支援モデルを見出した。活動の経緯と実際、利用者の声、連携する機関からの評価、スタッフの意識など、立体的な実態把握を進めることができた。以上のように、要保護児童対策地域協議会の運営システムの実態把握、研修プログラム開発に向けたパイロット研究、さらに民間活動における支援システム例の探索を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
要保護児童対策地域協議会の機能強化とチームマネジメントに関する研究を展開してきた。この中で取り組んだのは、①保育現場におけるメンタルヘルス問題のある親をはじめとする要支援家庭の実態把握(沖縄県保育所、保育士調査)、②要保護児童対策地域協議会における関係専門職の認識把握(質問紙による集合調査)、③チームマネジメントの必要性を明確にするための質的調査(グループディスカッションとカードワーク)、④先駆的支援活動例のヒアリング調査(NPOいっぽ、浦河町、糸満市ほか)、である。この過程で、併せて取り組んだのが⑤研修プログラム開発に向けたパイロットスタディ(集合調査のための研修プログラム提供とその評価調査)である。 ただし、平成27年度内に十分な結果報告を終えることができなかったため、1年間の研究期間延長により、学会報告および論文投稿による調査知見の公表を行うこととした。 研究課題に照らした進捗状況としては、①当初考えていた範囲を大きく超え、要保護児童対策地域協議会だけでなく関係する機関・専門職の意識調査や、連携する民間活動の先駆的事例にまで視野を広げた調査研究が展開できた。②また、将来の研究展開に向けた研修プログラム開発の試行評価まで取り組むことができた。③チームマネジメントの実態や問題点の把握、さらに望ましいその在り方のモデルを見出すことができた、といえる。しかし、要保護児童対策地域協議会のチームマネジメント・モデルを明瞭に打ち出すだけの検証にはさらなる調査研究を要すことから、引き続き研究を展開する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長した平成28年度においては、先駆的支援実践例への若干の追加調査を行う。実質的にはこれまでの調査研究知見の整理と公開にあてる予定である。 また、他の研究助成により、当初計画していた全国の要保護児童対策地域協議会への悉皆調査を行う予定にしている。これにより、その支援基盤の問題点を明らかにするとともに、本研究で得られた知見とあわせてその支援基盤整備の課題を明確に提示していく予定である。同時に、チームマネジメントのモデル提示と、それに準拠した研修プログラムの開発研究、さらにメンタルヘルス問題への対応機能やソーシャルワークの視点に基づくスタッフ研修プログラムの開発へと研究を展開していく計画である。
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Causes of Carryover |
調査が最終年度末まで継続したこと、調査対象地の都合で追加調査が次年度に持ち越さざるを得なくなったことから、1年間の研究期間延長をする必要が生じた。このため、残金を平成28年度に繰り越し、追加調査を行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
鳥取県米子市、愛媛県松山市において、要保護児童対策地域協議会と精神保健福祉士協会その他の関係機関合同研修プログラムの試行と評価調査を実施する。研究者2名の出張費その他経費に充てる計画である。その後、すでに得ている多様な調査研究データを論文投稿及び学会発表により公表し、さらなる研究展開につなぐ予定である。
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