2013 Fiscal Year Research-status Report
児童館の実践モデル開発にむけた釜ヶ崎「こどもの里」の実践に関する質的調査研究
Project/Area Number |
25380755
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
八重樫 牧子 福山市立大学, 教育学部, 教授 (80069137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松宮 透高 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (10341158)
田中 聡子 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (30582382)
高月 教恵 福山市立大学, 教育学部, 教授 (40270011)
西村 いづみ 県立広島大学, 保健福祉学部, 講師 (90405522)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 児童館 / 子どもの貧困 / 子育ち支援 / 子育て支援 / こどもの里 / 釜ヶ崎 / 子育ち・子育てネットワーク / 質的調査研究 |
Research Abstract |
釜ヶ崎の「こどもの里」(無認可児童館)の歴史を振り返り,その実践を支える理念を検討し,これからの児童館の方向性を明らかにするために,文献研究を行った.また,一部インタビュー調査などのフィールドワークも行った.主な文献は,「こどもの里」の荘保共子館長が執筆している雑誌論文や報告書,「こどもの里」のホームページの内容や新聞記事,文献等である. 「こどもの里」の30年間の実践の歴史を振り返ることによって次の5つの特徴が見えてきた.第1には実践を通して支援者自分の価値観や生き方が変えられたこと,第2には体験的な学習活動を重視してきたこと,第3には「生活の場」を提供していること,第4には地域社会に子育ち・子育てネットワークを創り,連携し,協働して問題の解決を図っていること.第5には公的な事業を活用し,必要ならば独自の事業を創設し,展開できる民間の特徴を生かした実践を行っていることであった. 「こどもの里」では,いわゆる3つのPと3つのSといわれる児童家庭福祉のすべてのサービスが包括的に総合的に実践されており,ミクロレベル,メゾレベル,マクロレベルのジェネラリスト・ソーシャルワークも展開されている.包括的な地域子ども支援センターとしての役割を担っている. 第二次世界大戦後の英国において20年間,児童ケア施策と実践を展開してきたマンチェスター児童部という地方自治体ソーシャルワーク機関が,養護児童に果たしてきた「社会的共同親」(The Corporate Parent)の実践を,日本においては,行政機関ではなく,民間施設である「こどもの里」が社会的共同親の理念を具体化した先駆的な実践を行ってきたことは重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に実施する予定であった主体的で内発的な児童館実践に関する文献を十分に収集することができなかった.平成26年度に実施する予定にしていた「こどもの里」の記録等の資料の収集・整理・分析を平成25年に実施したためである. 今後「こどもの里」の職員のインタビュー調査等のフィールドワークを実施していくためには,「こどもの里」の職員との信頼関係や,子どもたちとの関係づくりが重要である.そこで「こどもの里」の年末ワークキャンプや「子どもの夜まわり」(全8回中7回)に参加した.実践にかかわることによって,多くの記録や資料を収集し,分析することができた. 平成26年度に行う予定であった「こどもの里」の記録等資料の収集・整理・分析については平成25年度に実施することができ,「こどもの里」の職員へのインタビュー調査の実施のための準備は十分できたと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
「こどもの里」は無認可児童館ではあるが「大阪市子どもの家事業」としての実践であり,先駆的な児童館実践といえる.しかし,その実践は児童館実践だけではく,社会的養護実践にまで及んでおり,類似した児童館実践は他には見当たらない. 平成25年度に行う予定であった主体的・内発的の児童館実践の文献収集については,社会的養護に関する文献も含めて,特に児童養護施設に併設されている児童館に関する文献を収集・整理・分析していきたい. 平成26年度は,職員等のインタビュー調査を実施していく予定であるが,実際に「こどもの里」の実践に参加してみると子どもとのかかわりから得られる情報も重要であり,エスノグラフィーの手法も活用する必要があることが分かった.エスノグラフィーの手法について検討していきたい. また,「こどもの里」は地域の子育ち・子育て支援のネットワークの中心的役割を果たしており,地域との連携について「わが町にしなり子育てネット」や「西成区要保護児童対策地域協議会」についても研究分担者と一緒にヒヤリング調査を行いたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費としてノートパソコン及びノートパソコンに搭載する予定であったSPSSの購入については,SPSSが平成26年度の夏にバージョンアップする見込みなので,購入を平成26年度に変更した. 「こどもの里」の資料収集・整理を重点的に行ったため,主体的・内発的な児童館に関する文献収集及び整理のための人件費等を使わなかった. 県立大学の研究分担者が,平成26年度のインタビュー調査のための費用とするために平成25年度の分担金を繰り越した. 平成26年度はノートパソコンやSPSSを購入する. 社会的養護も含む先駆的な児童館実践の資料を収集し,整理を行うための人件費,また,「こどもの里」の職員に対するインタビュー調査や子どもの参与観察をするために謝金が必要になるので,平成25年度の繰越金も使うことにする. 研究分担者もそれぞれインタビュー調査を実施するので,謝金として繰越金も使うことにする.
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