2014 Fiscal Year Research-status Report
地方中小自治体におけるインフォーマルケアシステム構築に関する比較事例研究
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25380756
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
坂本 俊彦 山口県立大学, 附属地域共生センター, 教授 (40342315)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地域包括ケアシステム / インフォーマルケアシステム / 生活支援サービス / 住民参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地方中小自治体における「インフォーマルケアシステム(ICS)」構築促進を目的とし、先行事例の比較からその構築支援方法を整理するものである。研究第2年度は、初年度に聞取調査を行った6自治体から1自治体を抽出、20歳以上男女2,250名(750名×3地区)を対象とする質問紙調査を実施し「在宅高齢者支援活動」に対する地域住民の意識と態度の分析を行った。その結果、下記の知見が得られた。 (1)「生活支援活動」を支持する理由:①「将来自分や家族が地域からの支援を必要とするかもしれない(将来保障的利己主義)」(69.3%)、②「高齢化と世帯人員減少によって生じる課題は住民の支え合いで解決すべき(理念的互助主義)」(52.7%)、③「地域からの支援が必要な方を知っている(現実的互助主義)」(35.7%)等であった。 (2)「生活支援活動」への参加度と参加意欲:①「現在、参加していない」(48.7%)、②「今後も参加意欲なし」(11.8%)であり、「潜在的参加者」は回答者の36.9%に達する。この活動のひとつである「ご近所に対するさりげない見守り」については、①「現在、参加している」(27.4%) 、②「今後、参加したい」(55.0%) であり、「潜在的参加者」は回答者の27.6%に達する。 (2)の結果から、「生活支援活動」に今後関わる可能性のある回答者が3割程度存在しており、調査対象地区では、「ICS」への参加者の量的拡大が期待されることが明らかとなった。しかし、その実現のためには、参加促進の条件を明らかにする必要がある。価値意識的条件について尋ねた(1)の結果では、「将来保障的利己主義」が7割近くに達している。これを足場としながらも、より能動的な行為を生み出すと考えられる、「理念的互助主義」「現実的互助主義」を付加するための条件について、さらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究第2年度の目的は、「インフォーマルケアシステム(ICS)」構築に不可欠である、地域住民の住民互助活動への参加意欲の実態ならびにその促進条件を明らかにすることであった。このうち参加意欲については、「研究実績の概要」に記載したように、調査対象地域の3割が参加意欲を持っていること、とくに「ご近所に対するさりげない見守り」に対する参加意欲が高いことなど、参加者の量的拡大が期待されることが明らかとなった。 しかし、参加意欲の基盤をなす価値意識についてみると、受動的な①「将来保障的利己主義」が7割であるのに対し、能動的な②「理念的互助主義」が5割、③「現実的互助主義」が3割5部程度に留まっていることから、前者を足がかりとしながら、さらに後者の意識を高める取り組みが必要であることが明らかとなった。 そこで、これらの結果について調査対象3地区間の比較分析を行ったところ、①については地域特性(都市郊外地域/農村地域)あるいは活動特性(活動員主導型/単位自治会主導型)による差異がみられなかったものの、②については、地域特性による効果(農村地域においてより高い支持)が窺われる一方、③については、活動形態による効果(単位自治会主導型においてより高い支持)が窺われる結果となり、促進条件を検討するうえで有益な知見を得ることができた。 以上から、本年度については概ね順調に進展したものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる研究第3年度は、研究第2年度とは異なる規模の自治体において類似の住民意識調査を実施し、研究第2年度で得た知見を検証・補強するとともに、これと研究初年度の知見を綜合し、ICS3システム(「課題発見システム」「課題検討システム」「課題解決システム」)構築に関する支援方法を整理し、報告書としてまとめ、その成果を広く社会に還元したいと考えている。
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