2014 Fiscal Year Research-status Report
独立型社会福祉士によるソーシャル・イノベーションに関する実証的研究
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25380760
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 幸裕 弘前学院大学, 社会福祉学部, 准教授 (90341685)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 独立型社会福祉士 / ソーシャルイノベーション / 実践プロセスの可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度に実施した日本社会福祉士会に所属する独立型社会福祉士1017名に対する無記名自記式質問紙調査から明らかにできたソーシャル・イノベーションの実態を踏まえ、平成26年度は独立型社会福祉士のソーシャル・イノベーションの展開プロセスの可視化を目的にインタビュー調査を行った。 調査対象は、独立型社会福祉士21名で半構造化インタビューを用いた。インタビュー・データは、すべてICレコーダーで録音し、データは逐語録に起こした。逐語録は質的データ分析ソフトMaxqda2010を使用し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析を行っている。現時点では、ソーシャル・イノベーションの展開プロセスとして、①狭間にあるニーズの発見、②資源・サービスの開発、③地域社会からの支持、④地域の意識改革、⑤新たな価値の提案、のプロセスが抽出されている。また、ソーシャル・イノベーションを可能とする要因として、①自律性の高さ、②ネットワーク力、③マネジメント力、④アイデンティティの確立がみられる。今後は、さらにインタビュー調査を継続するとともにデータの分析から概念図を作成し、独立型社会福祉士がソーシャル・イノベーションを展開するうえでの課題について分析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、独立型社会福祉士におけるソーシャル・イノベーションの実態把握を踏まえ、ソーシャル・イノベーションを志向した実践プロセスの抽出および事例検討から、持続可能な実践に向けたシステム構築を目的としている。平成25年度は、日本社会福祉士会会員名簿にて所属先種別コードが独立型社会福祉士に該当する全独立型社会福祉士1107名を対象にアンケート調査を実施した。社会変革への意識は「意識している」44.0%、「どちらかといえば意識している」33.2%、「どちらともいえない」14.8%、「どちらかといえば意識していない」5.4%、「意識していない」2.6%で、社会的変革への意識は高い状況にあった。社会的変革の必要性を感じる場面では、「行政との交渉場面」89.1%、「相談援助の場面」85.3%と実際の活動のなかで社会的変革への意識を高めていた。また、社会的変革を意識していない理由では、「時間に余裕がない」78.4%、「報酬につながらない」54.3%、「財源が十分ではない」52.8%、「活動の法的根拠が十分ではない」47.2%となり、社会的変革の必要性は感じているものの時間的余裕、経済的不安定、活動根拠の弱さが障壁となっていることが伺えた。平成26年度はアンケート調査による実態把握を踏まえ、ソーシャルイノベーションを展開している独立型社会福祉士21名にインタビュー調査を行った。インタビュー・データの分析から、ソーシャル・イノベーションの展開プロセスとして①狭間にあるニーズの発見、②資源・サービスの開発、③地域社会からの支持、④地域の意識改革、⑤新たな価値の提案、のプロセスが抽出された。また、ソーシャル・イノベーションを可能とする要因として、①自律性の高さ、②ネットワーク力、③マネジメント力、④アイデンティティの確立が抽出された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度に訪問ができなった地域へのインタビュー調査を継続するとともに、インタビュー調査におけるデータ分析を踏まえ、ソーシャル・イノベーションを展開する先駆的な実践事例の検討行う。事例調査の対象者は、平成26年度のインタビュー調査およびこれまでの調査から、ソーシャル・イノベーションを展開していると判断された独立型社会福祉士5名を予定している。調査方法は事例検討を用い、調査対象者に①地域特性、②狭間にあるニーズの発見と対応、③ソーシャル・イノベーションの創出、で構成したシートを作成し、これまでのインタビューデータおよびホームページ、事業報告書、執筆原稿などの情報を加え整理した後にインタビューを行う。インタビューの内容は、①独立型社会福祉士としての狭間にあるニーズの発見、②地域課題への対応と結果、③ソーシャル・イノベーションの創出と課題、とする。インタビューは1回約2時間とし、インタビューはすべてICレコーダーで録音する。分析方法は、文字化した録音データおよびその他の情報を整理し、5者に共通する要因を類型化する。平成27年度における具体的な研究の流れは、4月から9月に調査依頼およびインタビューの実施、10月から12月にかけてデータの書き起こしおよびデータの分析、1月から3月に研究の総括を予定している。平成26年度の作業が平成27年度に持ち越され、データの収集・分析や総括のために割り当てた時間が減ることが考えられる。しかし、データの収集や分析は比較的短期間で終了すると思われるので対処できる。
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Causes of Carryover |
平成26年度はソーシャルイノベーションを展開する独立型社会福祉士を訪問しインタビュー調査を実施した。予定していた調査人数は達成できたが、調査日程の確保が難しかったことから、一度の訪問で複数のインタビュー調査が可能な都市部での調査が主となってしまった。そのため、地方都市および過疎地域でソーシャルイノベーションを展開する独立型社会福祉士へのインタビュー調査が行えておらず、それら地域への訪問調査に係る旅費が平成27年度に持ち越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に持ち越された経費は、(1)平成26年度に訪問調査ができなかった地方都市および過疎地域への訪問調査に係る旅費および備品、(2)研究成果の報告に関する学会や研究会に係る旅費などで使用する。 具体的には、(1)訪問調査に係る旅費:地方都市および過疎地域への訪問調査に係る旅費として約70万円を予定している。訪問地域や調査人数は、①栃木県佐野市(1名)、②北海道函館市(1名)、③福島県福島市(1名)、④大分県臼杵市(1名)、⑤京都府京都市(1名)、⑥静岡県静岡市(1名)の6箇所6名を予定している。(2)研究成果の報告に係る旅費として約10万円を予定している。研究成果を発表する学会などは①2015年度社会福祉学会東北部会、②2015年度北海道地域福祉学会などを予定している。
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