2013 Fiscal Year Research-status Report
地域包括ケアシステムのもとでの多元的福祉供給における家族介護の役割と支援のあり方
Project/Area Number |
25380788
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan College of Social Work |
Principal Investigator |
菊池 いづみ 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (00533217)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 家族介護支援 / 地域包括ケアシステム / インフォーマル・ケア / 介護サービス供給主体 / 地域支援事業 / 地域包括支援センター / 多元化 / 地方自治体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、介護サービス供給主体の多元化のもとで発展してきた介護保険制度が2011年法改正において示した「地域包括ケアシステム」の構築へと向かうとき、高齢者介護の重要な役割を担ってきた家族介護がインフォーマル・ケアの主体として評価され、有効に機能するにはどのような支援策が必要かを特定地域の市町村をフィールドとした量的・質的調査をもとに究明することである。また、インフォーマルな主体の役割に着目した「地域包括ケアシステム」のもとでの多元的福祉供給のあり方の理論構築を図る。 初年度にあたる平成25年度は、次年度にフィールド調査の特定地域として想定している基礎自治体の家族介護に対する支援事業の実施状況ならびに地域包括ケアシステムを構築するうえでの課題について、その特性を明らかにするために、広域自治体にあたる東京都の区市町村を対象とする郵送法による質問紙調査「家族介護に対する支援事業に関する自治体アンケート調査」を実施した。 今年度は、調査結果を回答者にフィードバックするために、区市町村別の集計結果を中心に報告書をまとめた。主な結果は次のとおりである。 家族介護に対する支援事業の実施状況は、総じて区において実施率が高く町村において低い傾向にあり、町村では、地域支援事業で定める事業費が十分ではないため一般財源で実施しているという回答はなかった。しかしながら、家族介護に対する支援策は、区に比べて市と町村において、高齢者福祉施策のなかでの優先度がどちらかといえば高い方に位置づけられている。また、地域包括ケアシステムの中核となる地域包括支援センターの設置状況は、自治体ごとに設定している日常生活圏域の数と同様、設置主体、設置数に多様性がみられたうえ、日常生活圏域の設定にあたり、市で、介護サービス提供施設の整備状況を重視している割合が相対的に高いことなどが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究実施計画のなかで中心となる(1)家族介護支援策に関する実証研究として、東京都区市町村を対象とする質問紙調査(「家族介護に対する支援事業に関する自治体アンケート調査」)を実施し、基礎的な集計結果をまとめた。しかしながら、研究代表者の所属機関の異動にともない当初予定していた調査対象地域の変更の検討を余儀なくされ、実査の時期が予定より若干遅れた。このことから、次年度以降フィールドとする特定地域の特性を明らかにするためのより踏み込んだ分析検討ができなかった(平成26年度早期に実施予定)。 また、(2)「地域包括ケアシステム」における多元的福祉供給の理論研究については、(1)の遅れの影響もあり、関連文献の収集に着手したものの十分な検討までには至っていなが、研究期間内には目的を達成できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、今年度に実施した「家族介護に対する支援事業に関する自治体アンケート調査」の結果をもとに、東京都区市町村における家族介護支援事業の取り組み状況について、地域包括ケアシステムの構築において重要となる要因との関連を分析することから始める。 この結果をもとに、特定地域(調査地として予定)のフィールドの特性を明らかにし、当初の計画どおり、日常生活圏域の差に着目した家族介護に対する支援事業の効果等について、家族介護者に対する量的調査ならびに、介護関係のパターンによる家族介護者と要介護高齢者に対する質的調査を実施する。 また、「地域包括ケアシステム」におけるインフォーマル・ケアの位置づけについて、福祉サービス供給主体の多元化の観点からの課題の精査を中心に文献研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
家族介護支援策に関する特定地域のフィールド調査による実証研究として、今年度実施した質問紙調査のデータ入力作業にあたり、回答内容について丁寧な点検が必要な調査項目があったことから、業者によらずにこの作業を行ったことで未使用額が生じた。また、「現在までの達成度」で述べたとおり、質問紙調査の分析が十分ではなく、これをもとに予定していたヒアリング調査を次年度に持ち越した。この調査で使用するために計上していた機器類を購入しなかったことも理由としてあげられる。 次年度に持ち越したヒアリング調査において使用する機器類を購入する予定である。また、次年度に予定している家族介護者ならびに要介護高齢者を対象とする量的・質的調査の実施にあたり、不足が生じた際に必要額を充当する予定である。
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