2013 Fiscal Year Research-status Report
地域精神保健福祉におけるソーシャルワークの共通基盤に基づく実践モデルの開発
Project/Area Number |
25380794
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Doho University |
Principal Investigator |
平澤 恵美 同朋大学, 社会福祉学部, 講師 (70611804)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 社会福祉 / 地域精神保健 / 地域生活支援 / ソーシャルワーク / 実践モデル |
Research Abstract |
今年度は、日本国内及び北欧(デンマーク・スウェーデン)のソーシャルワーク実践を専門職と当事者という2つの視点からの検討をおこなった。そのフィールドとして、地域精神保健福祉のモデルであるクラブハウスでの海外ヒアリング調査をデンマークのコペンハーゲン、スウェーデンのルンドにて実施し、国内のヒアリング調査として日本のクラブハウスにて実施した。 これらの調査を通して明らかになったことは、福祉国家としての枠組みを示している北欧における地域精神保健福祉の実践は、世界的な経済危機という大きな壁を経て転換期に直面しているということである。総合的な生活支援としてベーシックミニマムを保障することは、従来のクラブハウスでは求められていなかった支援であるのに対し、生活保障から医療保障に亘る基本的なソーシャルワーク実践を展開せざるを得ない状況となっている。そして、この実情を反映するように、当事者が求めている支援内容もベーシックな生活を構築していくために必要な支援が強調されてる。 一方、日本でのソーシャルワーク実践においても、従来は家族が賄ってきたベーシックなニーズの充足が求められており、家族支援体制の変化や家族の高齢化による変化がみられることがわかった。更に、日本クラブハウス連合が主催する「第1回日本クラブハウス国内会議」に出席し、当事者が企画・運営に関わることによる支援プロセスのあり方と当事者のエンパワメントを高める実践の方法論について検討することができた。 これらの分析結果を通して、時代と共に歩むソーシャルワーク実践モデルが受ける社会文化的な影響は、それぞれの国や地域における環境の変化に大きく左右され、その結果として新たな実践モデルの可能性があることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、平成25年度に予定していた北米クラブハウスでのヒアリング調査の予定を変更し、平成26年度に予定していた北欧でのヒアリング調査をおこなった。実施年度の入れ替えという計画変更はあったものの、国際比較研究の主軸となるヒアリング調査を実施することができた。今回の訪問では、スウェーデンではルンドのファウンテンハウス、デンマークではコペンハーゲンのファウンテンハウスをフィールドとし、専門家の関わりにおける当事者のフィードバックに着目した。また、福祉国家におけるクラブハウスの位置づけを明らかにするために、クラブハウス内での活動だけでなく、当事者の地域における生活実態に関するヒアリング調査も実施し、生活実態の現状分析をおこなった。本調査に関する結果については、今年度中に社会福祉学系の学会報告と論文執筆に取り組むことを予定している。 また、国内での活動では、地域精神保健福祉の実践フィールドとしているクラブハウスモデルが実施する「第1回日本クラブハウス国内会議」に出席し、専門職と当事者の協働によるソーシャルワーク実践の現状を把握し、その結果から日本的なソーシャルワーク実践における協働性を見いだす視点を重視した。 その他の具体的な研究の到達点として、日中活動を中心とするクラブハウスモデルだけではなく、精神障がいのある人々の生活を包括的に捉えるグループホームにも焦点をあて、長期入院経験者に対する支援を通して、日本のソーシャルワーク実践に関する分析をおこなった。本研究の結果については、同朋福祉に掲載されている。 また、数年前から取り組んでいるアメリカと日本の日中活動支援の調査結果として、プリテストとして実施した当事者の視点を重視した支援のあり方に関するヒアリング結果をもとに分析をおこない、クラブハウスモデルの実践者と共に日本精神障害者リハビリテーション学会にて研究発表をおこなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、平成25年度に実施することができなかった北米におけるクラブハウスモデルの当事者からのヒアリング調査をおこない、支援を受ける側の視点からみたソーシャルーワーク実践モデルのあり方について本調査をおこなう。また、ソーシャルワーク実践の現場でみられるベーシックミニマムに対する支援及びその他の支援について、時代的なニーズの変化に着目し、これからのソーシャルワーク実践の方向性とモデルのあり方についても検討する。 また、クラブハウスモデル調査に関する国内調査計画として、日本クラブハウス連合が企画する「第4回アジアクラブハウス会議」に運営委員として関わり、昨年度同様に当事者と支援者が協働で開催する会議のプロセスを通じた、ソーシャルワーク実践についての分析をおこなう。また、これらの活動に深く関わる当事者からのヒアリング調査をおこない、昨年度の調査結果と併せて、精神障がいのある人々に有効なソーシャルワーク実践とモデルについても検討する。 クラブハウスにおける精神障がい者支援は、クラブハウスというユニバーサルな支援モデルとしての枠組みとして今後も調査の軸として示す。しかし、クラブハウスモデルという枠にとらわれることなく、広義な地域生活支援におけるソーシャルワーク実践を検討するために、多様な地域生活支援モデルへのアプローチもおこなう計画もある。具体的には、平成24年度に調査を実施したイタリアトリエステでの社会的モデルの地域生活支援をとり上げ、精神科病院での治療に頼らない地域保健医療福祉のモデルにおけるソーシャルワーク実践の成立条件についても調査することを計画している。地域で精神障がいのある人々を支えることが、ごくあたりまえの支援として地域に根付いているトリエステに着目することにより、包括的にソーシャルワーク実践を捉えることが可能ならしめると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施したデンマーク・スウェーデン調査からの帰国が3月30日であったため、調査に要したコーディネータ費用の支払手続きを平成25年度内におこなうことが困難であったため。 平成25年度に実施した調査のコーディネータ代金として使用する計画である。
|
Research Products
(3 results)