2013 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設退所者へのアフターケアと当事者活動の方向性
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25380804
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
櫻谷 眞理子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (50288619)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / アフターケア / 自立支援 / 退所者 / 自己決定 / 生活技術 / 基本的信頼感 |
Research Abstract |
児童養護施設を退所後、社会の中で自活して生きていかねばならない若者たちが、様々な困難に直面している。親や親族に頼ることもできず、相談相手もいないため、ちょっとしたつまづきから生活が破綻する危険性も高い。こうした状況を鑑み、1997年の児童福祉法の改正では、児童養護施設の目的に「自立を支援する」という文言が追加された。さらに、2004年の改正では、退所者への自立援助が盛り込まれ、 2010年度には厚生労働省も「退所児童等アフターケア事業」を本格実施する方向を打ち出した。 このように、施設退所後の支援やセーフティネットの構築に向けて漸く動き始めたが、その中身や方法は模索段階である。今後の対策の一つとして、施設におけるアフターケア体制の強化が必要であるが、さらには施設とは独立した相談機関の拡充、当事者によるピアサポートやセルフヘルプグループ活動への支援を行うことなども必要だと思われる。そこで、平成25年度の研究では、施設職員によるアフターケア実践に注目して、その意義や方法について検討を行うことにした。今回は、施設退所者と職員を対象に聞き取り調査を実施した。 その結果、施設職員によるアフターケアとして、「日常的な生活支援」「生活問題へ対応・解決」「精神的な支え」「親子関係の調整」「自分史の紡ぎ直し」などを含む包括的な支援が求められていることが明らかになった。なお、自立生活を営むためには、「基本的な信頼感が獲得されていること」、「自ら判断して決定する力が育っていること」、「基本的な生活技術を身につけていること」が大切なことが把握できた。入所中からこうした力を育てることが重要だといえるが、退所後も支援を継続することの必要性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、施設退所者の実態やニーズ、施設における自立支援の現状を把握したうえで、より有効なアフターケアのあり方を明らかにすることを目的としている。そのため、①施設退所者の生活実態及び支援ニーズを把握する、②施設職員によるアフターケアの現状と課題を把握する、③当事者参加型の自立支援の実態と課題を把握することをまず目指している。 そこで、平成25年度は、施設職員及び退所者を対象にインタビュー調査を行った。さらに、自治体から委託を受けている相談機関及びNPO活動としてアフターケアを実施している相談機関、社会的養護の当事者団体による相談内容を把握するために訪問調査を行った。しかし、児童養護施設の職員を対象にしたアンケート調査については、調査票の作成を行ったのみで、調査を実施することはできなかった。平成26年度に実施して、施設として実施しているアフターケアの実践や工夫、課題等について回答を求める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
長い間、家族との葛藤の中で生きて来た人たちは、施設を退所後も親への複雑な思いをひきずっている。親との関係を客観視して、気持ちの整理ができるようになると、親の人生に巻き込まれずに、独立した人生を歩み始めることができる。こうしたプロセスは、精神的自立のために避けては通れない課題である。しかし、自己を確立するために自分史の形成(ライフストリー・ワーク)に視点をあてた研究の蓄積は乏しい。したがって、施設退所者の語りを通じて、自分史をつむぎ直していくプロセスを明らかにすることを目指している本研究の意義は大きい。 そこで、施設職員及び退所者を対象にインタビュー調査を行う際にも、自分史の振り返りや親への思いや気持ちの整理についての質問をさらに加えていきたい。しかし、当事者の心情に配慮しながら、面接者が侵入的にならないようにしなければならず、この調査を進めることは容易では無いと考えている。事前の準備を十分に行いながら、実施していきたい。 なお、行政やNPOによる居場所作りにも関わっているので、施設職員に頼ることができない退所者への支援のあり方についても研究を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
施設職員を対象に質問紙調査を実施する予定だったが、質問紙の作成が間に合わず、当該年度に実施できなくなった。次年度に実施することを計画しており、そのために予算を使う予定である。 質問紙の印刷。施設職員への郵送代。得られたデータの整理のためのアルバイトの雇用などに予算を使う予定である。
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