2014 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設退所者へのアフターケアと当事者活動の方向性
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25380804
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
櫻谷 眞理子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (50288619)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 施設退所者 / アフターケア / 自立支援コーディネーター / 支援計画 / 情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
児童養護施設は親から虐待を受けた子どもたちの受け皿として注目されているが、施設には原則18歳までしかいられない。したがって、社会自立が困難な状況であったとしても、施設を出なければならない。家庭にも帰れず、自活を始めた人の中には虐待の傷が癒えていない人もいる。仕事や人間関係でつまづき、精神的にも追い詰められてしまう。経済的にも行き詰まり、生活できなくなるなど様々な困難を抱えている。しかし、こうした人たちを支援するためのアフターケアの体制はまだ整っていない。 そこで、平成26年度も施設退所者の生活実態について把握するために聞き取り調査を行った。その結果、仕事や生活、お金のやりくり、人間関係の悩み、健康面での不安、孤独感など複合的な問題を抱えていることが明らかになった。既婚者で妊娠している人もいたが、順調な経過をたどっているのか不安だと話をしていた。出産や育児についても相談できる人がいないのでこれからも不安だと語っていた。 施設の職員を対象にアフターケアの現状について調べたところ、退所後も相談に応じているが、支援には限界があることが把握できた。職員が通常の仕事以外にボランティアとして行っているところが多かった。一方、東京都は自立支援コーディネーターを配置しており、アフターケアの体制が整っていた。3年間の支援計画を立てるなど、退所後の支援も業務として行っている施設もあった。また、定期的にコーディネーターが集まり、情報交換をしていた。今後はこうした実践をまとめ、方向性を示していきたいと思う。 なお、居場所の役割や運営の課題を探るために、聞き取り調査を行い、居場所づくりについての検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童養護施設退所者の生活実態と支援ニーズに関する研究を発展させるために、聞き取り調査を行った。特に、児童養護施設退所者を対象に、就労や生活の実態について聞き取りを行った。また、施設職員への聞き取りや自立支援コーディネーターっへのインタビューを行い、実態を把握した。 しかし、質問紙調査を実施することができなかった。研究の対象を広げたことや退所者の居場所づくりに関心が向いたこと、さらにインタビューなど質的調査を主に研究を進めたことが影響しており、質問紙の作成が遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
①児童養護施設退所者を対象に、就労や生活の実態について聞き取りを行う。②施設職員への聞き取りを行い、インケアにおける自立支援の課題及びアフターケアのあり方についても検討を加える。③当事者活動に参加している人たちにインタビューを行い、そうした活動の意義を探る。④居場所の意義、役割について検討を加えるために、自治体の予算で運営している所と自助グループ(セルフヘルプグループ)として運営している所を比較する。 こうした研究を通して、施設職員が施設退所者の生活実態やニーズを理解し、より適切なアフターケアがなされることが期待できる。また、仲間との支え合いを通じて、困難な状況を切り開き、エンパメントされる過程を分析することにより、居場所と青年期の自立の関係を明らかにすることに寄与すると考える。
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Causes of Carryover |
施設職員を対象に質問紙調査を実施する予定であったが、質問項目を絞りことや質問紙調査の依頼が遅れて、当該年度中に調査ができなかったために、その予算を次年度に使うことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書費など文献研究のための経費。施設訪問調査及び職員・退所者へのインタビューのための旅費、及び謝金。質問紙調査の印刷、調査紙の郵送、得られた結果の整理のためのアルバイトの雇用。報告書の作成と印刷のための費用。
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