2013 Fiscal Year Research-status Report
サービス付き高齢者住宅入居者の介護サービス利用特性とLSAの機能と役割
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25380829
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporp International Junior College |
Principal Investigator |
永田 志津子 札幌国際大学短期大学部, 総合生活キャリア学科, 教授 (60198330)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サービス付き高齢者向け住宅 / 地域包括ケアシステム / 生活支援 / 要介護 / 生活相談員 |
Research Abstract |
高齢者の居住とケアの相互関係について、平成24年度までの小規模多機能型居宅介護事業所の利用者に関する研究結果を再分析した結果、要介護高齢者は加齢、要介護状態の悪化に伴い「訪問」「泊まり」の利用が増加し、住まいとケアの統合ニーズが高ことが明らかとなった。独居高齢者の増加とまた同居する子世帯の家族意識からも住まいとケアの統合ニーズが高いことが指摘される。 札幌市内における120ヶ所の「サービス付き高齢者向け住宅」(以下「サ高住」)の公開情報上での概要把握を行った。その結果、費用面では入居可能層は多いとは言えないこと、介護を要する段階での入居を想定した「介護型住居」が多く、早めの住み替え希望者のニーズには対応できていないこと、入居者の「生活」に関する支援の内容やその担当者等に関しては具体的な見通しが持てないこと、特に夜間の安全面での保障が薄いなどが明らかとなった。またサ高住における暮らしが、地域包括ケアシステム上で謳われる「住み慣れた地域での暮らしの継続」に充当するものであるかは不明瞭であった。 26年度の調査の焦点化を図るためサ高住の視察を行った。その結果、LSA(生活相談員)の業務に関連するものとしては、入居者の多様性(早めの住み替えタイプ、独居の地域密着型サービス利用者、虐待による家族との要分離など)への対応など、相談のみならず生活の変化への支援、受診など医療面での支援、介護保険利用に関する支援など様々なサービスを提供していること、入居者の個別性(難聴や引きこもりなど)へのアプローチ方法など高度な専門的スキルを要することなどが確認できた。 サ高住は地域包括ケアシステム構築の大前提であるが、生活相談員による生活支援では業務内容の明確化が課題であることを生活相談員研修会参加によって確認することができた。なお、これらの他に次年度の量的調査用紙作成のための既存資料を収集、整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サ高住および生活相談員に関する資料の収集により既存の実態調査結果を検証した。既存調査はサービス提供側の視点を中心とするものであり、入居高齢者の生活の展開と介護サービス利用との相互関係や生活相談員業務との関わりを探るには不足する面が多い。高齢者の居住とケアの相互関係については、それらの統合ニーズが高いことを分析し日本介護福祉学会で報告した。 札幌市における既存サ高住の概要を公開情報で得られる枠内で分析したところ、上述のようにいくつかの課題を抽出することができた。運営主体は株式会社が68%を占めており全国平均の55%より多いことが特徴であるが、運営主体別の内容の相違を明らかにするには至っていない。公開情報で得られたこれらの結果を次年度の量的調査に反映させるべく調査用紙の作成にとりかかっている。なお、公開情報上での概要整理と課題の抽出については「高齢者の居住と介護ニーズからみたサービス付き高齢者向け住宅の課題~札幌市の事例から」(札幌国際大学紀要第45号)に掲載した。 介護先進国である北欧の事例では、文献レビューにより、施設介護から在宅介護への政策転換、介護職と看護職の業務統合、シェルターハウス(サービス付き住宅)の民営化などとともに、親族介護の法的支援の動向など、我が国の今後の在宅介護に有益な示唆を得ることができた。 札幌市における地域包括ケアシステムの進捗状況については、高齢者および要介護認定者の意向調査に参加(制度推進委員として参画)するとともに、今後の主要法律案の概要など第6期以降の計画策定資料が確認できた。地域ケア会議の推進における地域支援ネットワークの構築への生活相談員の位置づけ、また生活支援サービスの充実におけるサービスコーディネーターと生活相談員の相互関係など新たな課題も把握できた。生活相談員研修会では多様な業務内容の実態について知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、第一にサ高住入居者を対象とする量的調査(26年6月予定)およびヒアリング調査(8月予定)を実施する。調査内容は、入居の経緯、家族構成、家族関係、介護サービス利用状況、生活支援サービスの利用状況、生活相談員との関わり、日常生活上の課題、入居者間関係、医療サービス利用状況、介護保険制度外サービスの利用状況などである。 第二に、量的調査対象のサ高住に配置される生活相談員を対象として個別ヒアリング調査を実施する。調査内容は、入居者の生活ニーズおよびケアニーズへの対応方法、生活支援上の課題、困難事例と対処方法、介護サービス事業所およびケアワーカーとの連携状況、業務上求められる知識とスキル、それらの研修等学習機会、業務の限界と解決方法などを予定している。 さらに運営主体の法人等の協力を得て、サ高住の規模、施設設備、入居者の要介護度の分布、生活支援およびケアニーズへの対応に関する運営方針・理念、職員配置などについての状況を確認し、それらと生活相談員業務、入居者の生活およびケアニーズとの相互関係を分析する。 第三に、札幌市における地域包括ケアシステムの展開状況と生活相談員の連携実態を分析し、今後の発展の可能性を検討する。なお、運営主体および生活相談員対象のヒアリング調査から得られた結果により、地域包括ケアシステム内の関連部門への調査を実施することも想定している。 以上の調査結果により、サ高住入居者の生活モデルの抽出と分類を行う。また生活相談員の業務実態を分析し入居者ニーズとの整合性を検証して課題を整理する。さらにそれらを統合した地域包括ケアシステムの在り方を検討し、提言を作成する。結果は順次関連学会等で報告する予定である。
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Research Products
(2 results)