2014 Fiscal Year Research-status Report
サービス付き高齢者住宅入居者の介護サービス利用特性とLSAの機能と役割
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25380829
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Research Institution | Sapporo Otani University |
Principal Investigator |
永田 志津子 札幌大谷大学, 社会学部, 教授 (60198330)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サービス付き高齢者向け住宅 / 生活支援 / 生活相談員 / 介護保険 / 地域包括ケアシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
サービス付き高齢者向け住宅入居者およびLSA(生活相談員)に関する調査の実施にあたり、4月及び10月に関連学会へ参加した結果、地域ケアにおける生活者(主体)支援の理論と実践に関する視座、サ高住の全国的傾向および客観的評価基準の在り方等に関し示唆を得ることができた。これに基づき、サ高住の全国展開を手掛ける事業者に対し詳細情報入手を目的としてヒアリング調査を実施した。また北海道内で実施された高齢者向け住宅の運営に関する学習会に参加し現状把握を試みた。 8月から9月にかけて、当初の研究計画に従い、サ高住に関する量的調査およびヒアリング調査を実施した。事前準備として前年度に収集したサ高住に関する既存調査結果を精査し、質問項目の検討を行った。調査項目は住宅の概要、入居者の状況と介護サービス事業所の併設状況および利用状況、生活相談員の基本属性、相談業務の方法と内容、生活支援サービスの状況、地域住民との交流状況、相談員の多職種連携、医療連携等である。さらに北海道のサ高住の現状に詳しいNPO法人においてレクチャーを受け、関連団体である北海道高齢者向け住宅事業者連絡会等に調査の趣旨の説明と調査協力を依頼した。現状確認をもとに調査対象住宅をサ高住、有料老人ホーム(住宅型・介護型)、その他の高齢者共同住宅として、平成26年8月に、北海道内591ヶ所の住宅へアンケート調査用紙を送付した。回収率は23.01%、有効回答率は22.7%であった。量的調査結果の単純集計を終了しさらなる統計処理を継続中である。 アンケート調査においてヒアリング調査の許諾が得られた住宅から、住宅種別、運営主体別に特徴的な住宅8カ所を選別し、相談員および入居者を対象とするヒアリング調査を実施した。結果を分析して研究論文2本にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道内のサービス付き高齢者向け住宅を対象とするアンケート調査およびLSA(生活相談員)と入居者を対象とするヒアリング調査が実施できた。研究目的に沿い以下の知見が得られた。第一は生活相談業務の実態と課題である。従前の特別養護老人ホーム、通所介護事業所等における生活相談業務は、各々の施設等において固有の業務内容を一定程度確立していたが、サ高住では介護事業所併設が多く、相談員による入居者への関与は、生活領域より介護サービスが優先される傾向にある。生活面における相談業務はコンシェルジュ業務に近い形態となる結果、介護サービスの非利用者には相談サービスが行き届きにくい。介護サービスと私的生活領域一体型のサ高住においては、入居者の生活に総合的に関与する福祉専門職としての相談員の配置が望ましい。 知見の第2は生活支援サービスの在り方に関する問題である。サ高住では安否確認等の基本サービスはあるものの、生活支援サービスの内容は住宅内の生活行動支援に留まり、地域住民としての主体的な生活展開への支援となり得ていない。またそれらは用意されたサービスメニューからの選択であり、利用の都度、個別に費用が発生するものも多い。住宅型有料老人ホームでは住宅の責任において入居者の全体像を把握するが、サ高住では費用面では入居のハードルが下げられたものの、高齢に伴う生活支障の解決は細分化されて多くは自己責任に還元されているといえる。 入居者の地域交流は、サ高住登録制度3年を経過しても今なお不活発であり、住み慣れたなじみの環境の中での生活継続とはなり得ていない。入居者間においても状態像の相違から交流が困難な側面も見られた。 新たな「在宅」であるサ高住では、LSA(生活相談員)の地域ケアシステム上の位置づけは定まっておらず、併設介護サービス事業所の影響下にあり、その機能と役割の明確化が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査およびヒアリング調査の結果、以下が課題として浮上した。第一に入居者はケア要求の充足を優先させ、生活要求の表出は希薄となっている。ボランティアの導入等、サ高住における入居者と地域住民との相互交流の促進方法に関して、LSA(生活相談員)がどのように関与できるかの視点における検討が必要である。 第二に国が推進する地域包括ケアシステムへのサ高住の位置づけに関する具体的な取り組みに進展がみられず、進捗状況についてのさらなる情報収集を要する。26年度は北海道K市、H市の市役所を訪問しこの点に関する情報収集を試みたがいずれもサ高住の位置づけは未整備状態であった。今後はさらに北海道全体の推進状況について情報収集を行い実現の可能性を探る必要がある。 上記に関連しサ高住の生活相談員の研修も課題となっている。現状では研修参加の機会は少ない、もしくは関連事業所グループ内での学習に留まっている。住宅規模、入居定員、入居条件も様々であり、共通した問題関心のもとでの研修機会の設定は困難な面も多いことが想定される。しかし多職種連携、医療連携の必要性が高まっている現状から、今後はさらに業種間、職種間連携の方法と実現の可能性に関しての情報収集と分析が必要と考える。生活相談員は、入居者の地域生活継続を支援するキーパーソンであり、相談員の連携体制を確立することは、サ高住が地域包括ケアシステムの構成メンバーとなることの必須要件と言えよう。 入居者の実態からは、高齢者向け住宅の需要は今後も増加すると予想されるが、入居者の生活領域支援およ地域ケアシステム上の役割を担うためには生活相談員の雇用形態と条件に関しての検討も課題となる。27年度は、研究結果のさらなる精査とともに、上記の課題についてさらにヒアリングを実施する予定である。
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Research Products
(2 results)