2013 Fiscal Year Research-status Report
葛藤処理方略における文化的自己観構築のメカニズム:文化は子どもにどう伝達されるか
Project/Area Number |
25380859
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
塘 利枝子 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (00300335)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 葛藤処理 / 東アジア / 道徳 / 授業分析 / 文化比較 / 教科書 |
Research Abstract |
本研究は人々の葛藤処理方略に対する価値観がどう子どもたちに伝達されるかについて、東アジアの4ヶ国(日本・韓国・中国・台湾)の児童期・青年期・成人期の人を対象に行っているが、平成25年度では大きく分けて以下の2つの研究を行った。 第1に、4ヶ国の青年期・成人期の教師を対象に行う葛藤処理方略に関する質問紙の作成である。まず、質問紙の項目作成を行うために、葛藤処理方略の理想像として子どもたちに伝達されている教科書の作品内容を分析し、各国の研究協力者と話し合いながら、作品の選択を行った。次に、作品の要約と質問項目の作成の翻訳作業を各国の研究協力者と共に行った。現在バックトランスレーション作業中である。 第2に、日本の小学校において授業分析を行った。葛藤処理方略が次世代にどう伝達されるかについて、特に平成25年度は日本の小学校での道徳科の授業分析を行った。日本の関西のA小学校において5つの授業を観察し、ビデオ撮影した授業のプロトコル分析を行った。教師の語りのスタイルと子どもの発言から、教師がどのように自分たちの価値観を伝達しているかについて分析した。その結果、教師の意図に反した内容の子どもの発言については、板書をしなかったり、子どもの発言を繰り返さないなどの教師の行動が見られた。その一方で、教師の意図に添った子どもの発言には、板書をする際に色を変えて書いたり、子どもの発言をさらに強調したり賞賛したりしていた。また特に道徳科の授業では授業の最後に教師の訓話があり、教師の意図に添ったまとめがなされていた。日本では道徳科の授業は多様な子どもの意見を出させることによって価値観の多様性を学ばせる教科だと認識されているが、実際の授業では、子どもに多様な意見を言わせる一方で、教師は随所で細かな調整をしながら、教師の価値観の刷り込みを行っていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問紙の作成について、バックトランスレーション作業中であり、平成26年6月頃完成する予定である。 小学校の授業分析については、国語の授業についてビデオ撮影はしたものの、分析がまだ途中である。 以上の理由からおおむね研究計画としたあげたものは80%程度遂行されているが、まだ少し残された課題があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、質問紙を完成させ、4ヶ国(日本・韓国・中国・台湾)の研究協力者とも話し合いながら、各国の小学校や幼稚園での教師に対する質問紙調査を実施する。特に平成26年度は台湾に渡航し、台湾国立台北教育大学と協力しながら、台湾の小学校2校、幼児園6園の教師に対する質問紙調査を行う。また日本でも小学校教師と幼稚園教師に対する質問紙調査を実施する。さらに10~12月にソウル近辺にて質問紙調査を実施する予定である。その後平成27年度には中国の小学校と幼稚園で質問紙調査を実施し、4ヶ国の比較分析を行う予定である。 第2に、日本の小学校において国語科の授業をビデオで撮影し、授業分析を行う。また台湾の小学校において国語科と道徳科の授業をビデオで撮影し、研究協力者と話し合いながら授業分析を行い、日本の授業スタイルと比較する。さらにその後、平成27年度には中国や韓国での授業撮影と分析を行い、東アジア4ヶ国の授業における教師の葛藤処理方略に関する子どもたちへの伝達について比較分析を行う。 第3に、在日外国人と在外日本人の対する葛藤処理方略に関する面接調査を実施する。平成25年度には事前面接を既に行っているため、引き続き3年間にわたって面接調査を行い、葛藤処理方略の個人差と文化差について分析をする。 以上の3つの研究を統合させ、実際に行っている葛藤処理方略、理想像としての葛藤処理方略、そして、葛藤処理方略の価値観の伝達という3つの領域間の分析を行うことにより、葛藤処理方略の文化的側面と個人差について比較分析を行いながら研究を遂行する予定である。
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Research Products
(3 results)