2015 Fiscal Year Research-status Report
葛藤処理方略における文化的自己観構築のメカニズム:文化は子どもにどう伝達されるか
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25380859
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
塘 利枝子 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (00300335)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 葛藤処理方略 / 東アジア / 教師や保育者の価値観 / 異文化受容 / 教科書 / 台湾 / 韓国 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人々の葛藤処理方略に対する葛藤解決スキーマがどう子どもたちに伝達されるかについて、東アジア4ヶ国(日本・韓国・中国・台湾)の児童期・青年期・成人期の人を対象に行っている。平成27年度では大きく分けて以下の2つの研究を行った。 第1に、前年度までに行ってきた4ヶ国の大学生と保育者、教師を対象にした葛藤処理方略に関する質問紙調査の分析を行った。韓国、台湾、日本の研究協力者と共に分析した結果は以下の通りである。①日本では状況に応じて自分の葛藤解決方略を変えるというスキーマが、他の3ヶ国・地域に比べて多く見られた。また他者の葛藤処理方略に対する評価と、自分が実際に行う葛藤処理方略との間にズレが見られた。②中国では強者と弱者とがはっきりと区別されており、状況よりも個人の特性に注目した葛藤解決スキーマが、日本に比べて多く見られた。③台湾では、中国のように個人特性を重視した葛藤解決スキーマが基本的にはあるが、時には日本のような状況を考慮した葛藤解決スキーマを使っていた。④韓国では、日本と中国との間に挟まれて、時には状況要因を考慮し、時には相手の特性を考慮するといった葛藤解決スキーマの使い分けがなされていた。4ヶ国・地域ともそれぞれの外交状況が反映されていた。 以上の結果は、研究論文として大学紀要に発表(印刷中)するとともに、日本発達心理学会第27回大会と日本保育学会第69回大会にて、研究協力者と共に発表を行う予定である。 第2に、在日外国人と在外日本人に対する面接調査を行った。中国籍と台湾籍の人々に対して、現在の日中・台湾関係について質問するとともに、彼らの身近な問題についての葛藤処理方略について尋ねた。その結果、現在の自分をどう捉えているかによって、異文化における自分の位置取りも異なることが明らかになった。今後は異文化間能力との関係についても分析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問紙調査の分析については、4ヶ国・地域すべてで調査を終了し、分析についても8割程度終了した。面接調査についても8割程度分析を終了したが、理論化・抽象化の作業が残っている。 以上の理由からおおむね研究計画としてあげたものは8割程度遂行されているが、まだ少し残された課題があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、質問紙調査の分析をすべて終了させ、4ヶ国・地域(日本・韓国・中国・台湾)の研究協力者とも話し合いながら、日本発達心理学会、日本保育学会等での発表結果も踏まえ、4ヶ国の比較分析をすべて平成28年度夏頃までには終了させる。これらをもとに、マクロ・メゾ・マイクロシステムとの関係が、個人の葛藤解決スキーマにどう影響を与えているかについて検討する。 第2に、面接調査のデータの分析を深めるとともに、個人のライフヒストリーとマクロの社会状況との関係、周囲の人々の価値観と被面接者の位置取りとの関係について分析する。 第3に、小学校や幼稚園でのフィールドワーク調査による分析を進めながら、質問紙調査、面接調査における研究を統合させ、実際に個人が行っている葛藤処理方略、他者が行っている葛藤処理方略に対する評価、そして葛藤処理スキーマの伝達という3つの領域間の分析を行う。それらの結果をふまえ、葛藤処理スキーマの文化的側面と個人差についての比較分析を行いながら、最終報告書をまとめる予定である。
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Research Products
(5 results)