2013 Fiscal Year Research-status Report
自律的動機づけ形成のデュアルプロセスモデル構築と統合的調整支援に関する研究
Project/Area Number |
25380865
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
伊田 勝憲 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (20399033)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自律的動機づけ / 自己決定理論 / 統合的調整 / 課題価値 |
Research Abstract |
平成25年度は,自己決定理論における有機的統合理論の枠組みに関する文献展望に基づき,これまで測定されることが少なかった統合的調整段階を含めた質問紙尺度の仮項目を作成し,大学生を対象として予備調査を行った。 特に統合的調整段階と他の調整段階において,意欲を価値的側面から捉えた課題価値との相関に違いが見られるかという視点から分析を行い,統合的調整が5つすべての課題価値と有意に正相関している結果が得られた。統合的調整の名の通り,学習者が複数の価値を矛盾なく内面化・統合し,それらを同時に追求できていることが示唆された。すなわち,統合的調整段階にある学習者は,1つの課題に対して,その楽しさや自己成長への寄与のみならず,将来の職業実践への有用性や就職試験での有用性,そして他者からの評価を同時に得られることを期待し,外部からの期待と内面からの欲求との折り合いがつけられている状態にあると考えられる。 一方,内発的調整や同一化的調整では有意な相関が認められない価値があるなど,統合の程度は限定的であり,統合的調整段階が最も自律性の高い状態であるという「自律的動機づけ形成のデュアルプロセスモデル」が描く仮説を支持する結果であった。 ただし,今回の予備調査は対象者数が少なかったため,因子的な妥当性については今後の検討課題として残されている。また,学期始めの課題価値希求としての質問であったため,学期末における課題価値評定としての質問においても同様の結果が得られるか,引き続き分析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画のうち,1つめの大きな柱である統合的調整に関する尺度開発のための項目化については,平成26年度に入ってから実施予定であった予備調査の実施と一部結果の分析まで進み,当初の計画以上に進んでいる。一方,もう1つの柱である疑似内発的動機づけの部分については,文献展望は順調に進んでいるものの,予備調査の実施にまでは至らなかったため,平成26年度の実施段階で調整を図る必要がある。ゆえに,研究実施計画全体としては,おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,統合的調整および疑似内発的動機づけの測定尺度の開発を中心に研究を実施する。主に高校生・大学生を対象として調査を進めるが,「自律的動機づけ形成のデュアルプロセスモデル」の特に他律的な段階については,小中学生の発達段階に対応する部分もあると考えられる。よって,日常的に児童・生徒の指導に携わっている教師への聞き取りなど,補助的な検討を含めてモデルの実証的研究を進めたい。また,高校生・大学生を対象とした調査において,統計的分析に必要な規模の協力者確保に努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年4月から遠隔地への所属機関の変更が予定されていたため,調査対象者へのフィードバックおよび継続した追加調査実施の困難さ等を考慮し,当初予定していた調査の一部について実施を見送ったことによるものである。 実施を見送っていた調査については,次年度に他の調査と平行して実施することを計画しており,当該調査のための用紙購入費用に充当する予定である。
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