2013 Fiscal Year Research-status Report
知識の一般化における妨害および促進要因としての具体的情報
Project/Area Number |
25380868
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
工藤 与志文 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20231293)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ルール学習 / ルール表象の抽象性 / 事例の具体性 / 知識操作 |
Research Abstract |
工藤(2013)は知識表象の不十分な抽象化がルール学習を妨げることを実証的に示した。その一方で,具体性を保持したままの表象化が,一部の知識操作を促進する可能性も示された。そこで,本研究では知識の抽象性と具体性を共存させる方法として「概念モデル」に着目し,ルール学習における促進効果を検討した。具体的には,物質の原子・分子を表す粒子を分子間力を表すバネでつないだモデル(ばねモデル)を取り上げた。「ばねモデル」はバネによる伸縮という具体性と原子・分子模型のもつ抽象性を兼ね備えている。大学生を対象に「フックの法則」の一般性を学習する場面において,「ばねモデル」と,原子・分子を表す粒子の積み重ねモデル(粒子モデル)の効果を比較した。教授実験の結果,「フックの法則」に関して基礎知識を持つ学生にとってはむしろ「ばねモデル」を教授した方がテスト成績が低く,学習妨害効果が認められた。基礎知識を欠いた学生においては,両モデルの効果に差は認められなかった。これらの結果は,当初の予測に反するものであり,今後詳細な検討が必要となるが,既有知識水準と概念モデルの抽象度との間にみられた交互作用は興味深いものがある。高校等で既習の知識が,現実の現象と切り離された形で抽象化されたものであったとすれば,「ばねモデル」の具体性と統合することは困難であり,かえって混乱を招いたのかも知れない。以上の結果から,教授情報の具体性の効果について検討するためには,既有知識の抽象度とのマッチングを考慮しなければならないという,新たな知見・課題が見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されていた教授実験を実施し,その結果の分析が終了しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
教授実験の結果は,当初の予測に反するものであり,今後の研究の進み具合によっては,研究計画の見直しや研究の方向性の変更も必要となろう。特に,既有知識水準と概念モデルの抽象度との間にみられた交互作用が検討対象となるが,新たな研究課題の発見につながる可能性もあり,今後さらなる分析・検討を続けていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費の中で次年度支払い部分が生じたため。 当初の計画に従って使用する。
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Research Products
(1 results)