2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380877
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 晴夫 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (20361595)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 回想 / 想起 / 高齢期 / ナラティヴ |
Research Abstract |
自己による回想の語りを契機とした不随意な回想の連鎖の探索を目的とし,生活史調査面接における自己による回想の語りと面接時間終了後の不随意的回想との関連,およびその回想が連鎖的にもたらす帰結を分析した。分析に際しては,ナラティヴ・アプローチに基づき,出来事の意味づけと随伴感情に着目した。中年期から高齢期にある24名(平均60.4歳)を対象に,生活史調査面接によって回想の語りを促進し,7日間の日誌法によって日常生活中の不随意的回想を収集した。回想の語りと,その後の不随意的回想との関連を分析した結果,回想の語りで語られた出来事と同一あるいは類似の出来事や回想の語り場面自体の回想の連鎖が見出された。また,これらの回想の帰結として,出来事の意味づけや随伴する感情の反復,変容,付加が生起していた。本研究の結果から,中年期から高齢期においては,自己による回想の語りが,その後の回想の連鎖を賦活する可能性が示唆された。 また,他者による回想の語りを契機とした不随意な回想の連鎖の探索を目的とし,二組の60代の高齢者夫婦の協同回想を分析した。夫婦双方にそれぞれライフライン(人生の経路を図示)を作成してもらい,ライフコース上の転機について説明を求めた。そして, 互いの説明が契機となって生起した回想を述べてもらった。最後に,結婚や長子出生,退職などの標準的なライフイベントについて,協同で回想してもらった。その結果,高齢期にある夫婦間では,互いの回想の語りが契機となって,自身の回想が連鎖的に発生し,その後,両者の回想をめぐる合意形成の過程が生じることが明らかになった。個々の回想に続く協同的な回想が,互いの回想の連鎖を引き起こし,いわば個人史が家族史となる過程が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた個別面接法と日誌法による不随意な回想の収集と分析は,学会発表や論文投稿によって,その成果を公表する段階に達している。また,合同面接法による不随意な回想の収集も並行して進んでおり,事例に基づく仮説的な分析カテゴリーを抽出している。
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Strategy for Future Research Activity |
合同面接法による不随意な回想の収集を進めることによって,これまでに得られた仮説的な分析カテゴリーの普遍性を探る。また,カテゴリー間の関連性を解析し,不随意な回想の連鎖のモデル生成を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ収集に要する面接時間が当初計画に比べて短時間だった回があり,その分,録画メディアが少なくて済んだことが主な理由である。 面接対象者によっては,面接時間が長時間になる場合があり,今回の差額はそうした場合の録画メディア等の購入に使用される。
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Research Products
(3 results)