2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380877
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 晴夫 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (20361595)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 回想 / 想起 / 高齢期 / ナラティヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的のひとつである,自己による回想の語りを契機とした不随意な回想の連鎖について,探索した。中年期から高齢期にある24名を対象に,生活史面接によって回想を促した後,日誌法によって日常生活中の不随意な回想とその連鎖を収集した。回想の語りと,その後の不随意な回想との関連を調べた結果,一部の回想の語りが,後続する回想を連鎖的に惹起し,それによって,当初の回想の内容や随伴感情が変化していた。これらの結果の一部は,「心理臨床学研究」誌上で発表した。 やはり本研究の目的として掲げた,他者による回想の語りを契機とした不随意な回想の連鎖については,夫婦間における生活史の協同想起の事例を分析した。その結果,協同想起の語りに関して見出したカテゴリーの例には,「相手の回想に触発された回想」,「相手の回想との齟齬の解決」,「相手の回想の非言語的承認」,「相手に回想内容を否定されて修正」が挙げられる。 また,この研究に付随して,語りを糸口とした実証研究についての方法論的検討を行った。一般に調査面接では,研究者は観察者の立場から,面接で得た語りのデータを分析し,考察する。しかしながら,調査のための面接といえども,そこで語るという行為自体が,翻って,語りというデータそのものに再帰的な影響を及ぼし得る。そのため,調査面接における語りというデータは,収集されるとともに,当の調査面接という手続きを通じて生成されるという性質を伴う。本研究課題が捉えつつある,回想の語りを契機とした不随意な回想の連鎖は,心理学を含む社会科学全般で多用される調査面接の方法と,その結果の分析について,再考を促すという示唆を有する。このような方法論的検討の一部は,「臨床心理学」誌上で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた個別面接法と日誌法による不随意な回想に関する研究は,学会大会や学会誌において公表し始めている。合同面接法による不随意な回想に関する研究も,収集したデータを順次分析している。
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Strategy for Future Research Activity |
不随意な回想の連鎖を含む発生機序について,解析を進める。そのためには,不随意な回想を引き起こした要因を探索し,それらの要因と回想との関連を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
録音データのトランスクリプトを委託せずに,研究代表者自身が行ったため,委託費用が発生しなかったことが主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会参加を当初予定よりも増やすため,その経費に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] わかるとは2014
Author(s)
野村晴夫
Organizer
日本教育心理学会第56回総会
Place of Presentation
神戸
Year and Date
2014-11-08 – 2014-11-08
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