2014 Fiscal Year Research-status Report
パーソナリティ検査において交互作用する社会的望ましさをとらえる
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25380883
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鋤柄 増根 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (80148155)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | パーソナリティ検査 / 社会的望ましさ / 項目反応理論 / 気質 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度,BigFiveの項目における社会的望ましさの影響を,項目反応理論のモデルから検討するために,多値回答の項目反応理論モデルであるGPCM(Generalized Partial Credit Model)に基づいて位置(困難度)パラメータを求めた。そのパラメータを利用して,BigFiveの項目の社会的望ましさをパラメータに含みこむ測定モデルを改変を重ね,シミュレーションデータと実データとの適合が比較的よいものができた。このモデルを他のパーソナリティ検査でも利用できるかの検討を始めた。 上記のモデル化とは別に,社会的望ましさの影響の検討を,気質の調査(乳児向けのECBQと前青年期向けのEATQ)でも継続している。ECBQに関しては,社会的望ましさは,養育者の子供への期待などの信念に現れることを明らかにした論文が現在印刷中となっている。EATQに関しては,子どもと養育者とのペアデータから,子ども本人の評定に社会的望ましさの影響がどの程度入り込んでいるかを検討している。小学校高学年から中学までの横断的データに基づいて,どの年齢段階から,文化差としての社会的望ましさが,その評定に影響してくるかを明らかにする準備をしている。一方で,子どもはある年齢になると自分の感情状態などを養育者には話さなくなるといわれている(渡邊,2014)ことから,養育者の評定と子ども本人の評定のずれには,社会的望ましさの影響との両方を評価する必要がある。 この検討から,文化の影響が,どの年齢段階からパーソナリティ検査の結果に現れるのかをの検討することが可能になる。ただし,子ども自身の回答が,自己認識の悪さなどで影響されないようにすることがその条件となるので,この点を克服しながら,社会的望ましさの影響を評価できるなら,パーソナリティ検査からも文化の影響を検討できることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目反応理論のモデル化は完成とはいえないが,昨年度より改善された。ファセット理論に基づくマッピングセンテンスの作成をほぼ終わることができ,予備的に実施する準備にある。子ども用の気質の調査の結果を社会的望ましさと関連付けて公表できたことと,社会的望ましさの影響がどのくらいの発達段階から大きく出てくるかを,検証する手がかりが得られたことなどから,全体としてはおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
社会的望ましさの影響が出現する発達段階の調査 小学生高学年から中学生と成人に,気質次元についての望ましさの評価を実施し,その一致度を検討し,気質検査の結果に前青年期と成人とでは社会的望ましさの影響がどのように異なるかを検討する。 マッピングセンテンスの完成と調査実施 Mischel & Shoda (1995,1998)のCognitive-Affective Personality System(CAPS)によれば,同じ状況(場面)であっても,個人が持つ社会的望ましさへの感度という特性によって,状況の解釈や意味という認知が異なる。その認知に基づいて個人は行動するので,状況による認知が異なれば,その個人の行動は状況によって,外からは異なって見えることになる。したがって,ある状況をどのように認知するか,具体的には「社会的に望ましい」「自分にとって重要である」などの状況の認知が一つのファセットになる。ファセット空間に行動を配置するためのマッピングセンテンスを完成させ,これを使ったこのパーソナリティ検査の本調査を行う。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた,統計処理ソフトなどのバージョンアップの時期が延びたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
バージョンアップに使用する。
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