2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380893
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小塩 真司 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60343654)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 二分法的思考 / 適応 / 不適応 / パーソナリティ / 思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ものごとを「白と黒」「善と悪」「勝者と敗者」のように中間を排除した二種類のいずれかとして二項対立でとらえる二分法的思考が適応・不適応にどのように関わるかを解明することを目的としている。 平成26年度に引き続き平成27年度においても,二分法的思考にかかわる様々な特性との関連について検討を重ねてきた。ひとつは,自己愛傾向の一側面であり,自分自身が他者よりも多くを得るのが当然であるという一貫した感覚を意味する特権意識と二分法的思考との間に関連があることが示された(下司・小塩, 2016)。特権意識には心理的特権意識,誇大型特権意識,過敏型特権意識の3側面が含まれるが,いずれの側面についても二分法的思考との関連が認められたことから,これらの自己感覚の基盤として二分法的思考が位置づけられる可能性が示されたと言えよう。また理論面で特筆すべきは,二分法的思考を意思決定に関わる二重プロセス理論から解釈する可能性が示されつつあるという点である(三枝・小塩, 2015ab)。二重プロセス理論では,人間の思考が自動的で素早い判断を行なうシステム1と,速度が遅く熟慮的な判断を行なうシステム2という2つのプロセスからなることが仮定されている。たとえば,損失を回避することを重視するか,手元に残る金額を重視するのかなど,その判断が自動的な思考であるかどうかを検討するフレーミング課題への反応と二分法的思考との関連を検討したところ,二分法的思考の下位側面の中にはシステム1にかかわる側面と,システム2にかかわる側面の双方が存在する可能性が見出された。このことは,二分法的思考と各種適応・不適応指標との関連を検討する際に重要な観点となり得る知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討から,二分法的思考の特徴を明らかにする重要な研究知見が蓄積しつつある状況にある。今後もより確かな研究知見を積み重ねるべく,引き続き調査・検討を行っていく予定である。最終年度においては,二分法的思考の適応・不適応経路を明確化する検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに解明された,二分法的思考と諸特性との関連を総合し,二分法的思考が何を生じさせ,どのように問題へと至るのかを統合するモデル化を試みたい。以前も述べたように,最終的なモデル構築を行うに際し,変数間の関連の頑健性について十分に検討する必要があると思われる。これはより一般化できるモデル構築を目指すためである。その作業についても平行して行い,最終的なモデル化を試みる。また現在,これまでに得られた研究知見を公表する準備を進めている。準備が整ったものから,これらを積極的に公表していく。
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Research Products
(3 results)