2015 Fiscal Year Research-status Report
アスペルガー障害を持つ児童への神経心理学的観点からの検討
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25380894
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐々木 和義 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70285352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 俊彦 大阪人間科学大学, 人間科学部, 教授 (20259500)
小関 俊祐 桜美林大学, 心理・教育学系, 講師 (30583174)
加藤 美朗 関西福祉科学大学, 教育学部, 講師 (40615829)
門脇 千恵 広島国際大学, 看護学部, 教授 (50204524)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 視線追跡 / 表情認知 / 対人コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
【自閉症スペクトラム障害児者における視線に関する研究の動向と展望】 アイトラッキングを用いたASD児者の顔刺激への視線追跡実験の展望を行うため,オンライン文献データベースシステムWeb of Science,で検索した。検索ワード「autism×face gaze」で検索し,さらに「eye-tracking」で文献を絞ったところ,最終的な該当論文は92件となった。 ASD児が「顔のどこをどのように見るか」という議論は,発達早期の段階では,共通した知見は見いだせなかった。6ヶ月までの縦断的調査でわかったことは,Jones & Klin (2013) の研究から,生後2ヶ月までは目への固定時間に差はなく, 2 - 6ヶ月頃の間で目領域の注視が減少する場合があることが確認された。それに対して,Chawarska et al. (2013) は6ヶ月の時点では目に注意を向けている場合があるという報告や,Shic et al.(2014) は目と口の比率に差は出ず,顔の内部領域(目・鼻・口など)に注意が向きにくいことが示唆され,一貫した結論に至っていない。
【視線追跡実験】 視線追跡の実験に関しては、モニター画面上に提示したヒト顔刺激が、線画であろうと写真であろうとも、さらにどの表情(笑顔、泣き顔、怒り顔、ニュートラルな顔)であろうとも、さらにアクセサリーなどの妨害刺激の有無に関係なく、表情を読むという条件下では、自閉症スペクトラムの高校生も大学生も対照群である同年齢群との間に視線追跡の部位に有意な差はなく、目や口を最も特見ていた。さらに、自閉症スペクトラム生涯の小学生、中学生、高校生、および大学生の間にも優位な差は認めっれなかった。したがって、顔の一部分を変形させたり、各部位を合成して作成したヒト顔刺激とは異なり、我々が作成した自然な刺激では、表情認知に適切な部位を見ていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度には海外文献の展望を行い、この点での遅れを取り戻した。 視線追跡の実験については、2015年度に行えなかった分を実施して、この点での遅れを取り戻した。
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Strategy for Future Research Activity |
視線追跡の実験に関しては、モニター画面上に提示したヒト顔刺激が、線画であろうと写真であろうとも、さらにどの表情(笑顔、泣き顔、怒り顔、ニュートラルな顔)であろうとも、さらにアクセサリーなどの妨害刺激の有無に関係なく、表情を読むという条件下では、自閉症スペクトラムの高校生も大学生も対照群である同年齢群との間に視線追跡の部位に有意な差はなく、目や口を最もよく見ていた。さらに、自閉症スペクトラム障害の小学生、中学生、高校生、および大学生の間にも有意な差は認めっれなかった。したがって、多くの研究で用いられている顔の一部分を変形させたり、各部位を合成して作成したヒト顔刺激とは異なり、我々が作成した自然な刺激では、表情認知に適切な部位を見ていることが示唆された。 実生活内での視線の会いづらさは、顔刺激の特性そのものよりも、対面等の社会的状況などのより社会的刺激に負う可能性が考えられる。今年度はヒト顔刺激を動画にし、それに対して応答するという状況下での、自閉症スペクトラム障害児者の視線追跡の様相を検討する。すなわち、動く顔刺激に対する反応と、それに対する応答場面という実際の対人場面よりも一段階負荷の少ない基礎的な刺激事態での視線追跡の状況を把握し、実際のコミュニケーション場面での研究に対する示唆を得る。 学会での研究成果の公表、および論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
自閉症スペクトラム障害児者は、モニター画面上のヒト顔刺激に対して、目をほとんど見ずに他の部位を多く見るという定説を再確認して、対人コミュニケーションスキル・トレーニンに対する示唆を得るべく視線追跡実験を行った。その結果、小・中・高・大学生ともに線画でも写真でも、また異なる表情においても、さらにアクセサリーなどの妨害刺激を入れても、視線追跡をする部位は同年齢の健常群と有意な差異は認められず、目や口という表情認知に重要な部位を最も多く見ていた。すなわち、顔刺激そのものに対する回避が存在するというよりも、対人場面における社会的な要因が重要なことが示唆される。 そこで、期間を延長して、これまでの実験場面を少し実際のコミュニケーション場面に近付けた動画への応答場面における視線追跡の様相を把握して、さらなる研究への知見を提供するために、使用額を抑えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は刺激材料の作成と被験者謝金を中心として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Utility of behavioral consultation based on functional analysis for a junior high school student.2015
Author(s)
Koseki, S., Kusumi, K., Tachibana, M., Sokabe, Y., Ono, H., & Koseki, M.
Organizer
8th International Conference of Association for Behavior Analysis International
Place of Presentation
京都国際会議場
Year and Date
2015-09-27 – 2015-09-29
Int'l Joint Research
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