2014 Fiscal Year Research-status Report
意味的,言語的情報処理における干渉/抑制メカニズムの検討と教育臨床への活用
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25380909
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
田爪 宏二 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (20310865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高垣 マユミ 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (50350567)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 線画-単語干渉課題 / 意味的・言語的情報処理 / 反応遅延間隔(RDI) / 干渉・抑制 / ワーキングメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に継続し、反応遅延間隔(RDI)を導入し反応を遅延した単語-絵干渉課題(研究II:実験3、4)および絵-絵干渉課題(研究III)における干渉、抑制メカニズムの検討(研究III::実験5、6)を実施した。具体的には、RDIと、絵と単語との意味的な関連性を操作することで生じる意味関連効果とが干渉、抑制に及ぼす効果を検討した。さらに、反応として命名とカテゴリー判断という、ターゲットに対する意味処理のレベルが異なる課題を比較した。研究遂行に当たって、昨年に継続し背景となる文献レビューを行うとともに、実験課題のプログラミングを行い、実験課題を作成した。 反応を遅延した単語-絵干渉課題における干渉、抑制(研究II)について、実験の結果、反応遅延間隔(RDI)の増加とともに反応潜時は減少したが、干渉量は絵の命名の場合よりも少なくなり、特に課題が単語の読みである場合には干渉が消失した。反応を遅延した絵-絵干渉課題における干渉、抑制(研究III)について、実験の結果、RDIの増加とともに反応潜時は減少した。また課題が絵の命名である場合と絵のカテゴリー判断である場合とでは、干渉量RDIによる変化において差異がみられた。 これらの実験結果から、ターゲットおよび妨害刺激の属性(絵/単語)及びその組み合わせ、さらに反応として求めるターゲットに対する意味処理のレベルの違いが干渉、抑制に及ぼす効果、およびこれらとRDIとの相互作用を検討することができた。そこから意味的処理に関連した課題の処理過程や、干渉の生じるメカニズムについて新たな知見を得ることができ、一定の学術的意義を見出すことができると考えられる。 なお、実験的研究と並行して教育現場における認知発達、教育に関する調査を実施し、研究成果の教育的応用について検討するための資料を蓄積することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、認知活動における意味(概念)や言語に関わった干渉、抑制のメカニズムを検討するとした研究目的のうち、単語-絵干渉課題(研究II)および絵-絵課題(研究III)を使用した検討を行った。具体的には(1)意味情報(絵)と言語情報(単語)との間に生じる干渉、抑制のメカニズムの検討、(2)課題において刺激の処理と反応とを分離する手続き(RDI)により、絵と単語の処理および干渉、抑制を統括する反応選択・決定システムの機能の検討を行い、さらに課題の刺激を操作した追加の実験を行うなど、実験は概ね当初の計画通りに遂行することができ、相応の研究成果を上げることができている。 研究の過程で共同研究者とは常にメール等で協議するとともに、研究打ち合わせを複数回実施し、研究上の連携も問題なく行うことができた。 また、研究成果の一部は学会発表および学術論文として公表した。次年度も継続して研究成果を公表していく予定である。また、研究課題に関連する学会に参加して情報収集を行い、さらに教育現場における認知発達、教育に関する視察や調査を通して実験的知見の応用に関する情報収集を行うなど、情報の収集や研究成果の公表についても適宜進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、当初の計画と大きな変更はない。すなわち、平成27年度においては、まず、研究IVとして次の2つの実験を通して研究を進める。すなわち、ターゲットとディストラクタの両者がいずれも単語である課題(単語-単語課題)を実施し、ターゲット、ディストラクタの属性が干渉、抑制に及ぼす効果およびこれらとRDIとの相互作用を検討する。さらに、研究Vとして、研究I-IVの結果を総括し、意味的情報や言語的情報と関わった干渉、抑制のメカニズムを、主に反応の選択・決定システムの機能、刺激の処理と反応活動および両者の相互作用の観点から検討する。その結果をもとに、絵と単語の処理および干渉、抑制を統括する反応選択・決定システムの機能に着目した総合的な情報処理モデルを策定する。 以上の実験的検討を踏まえ、最終年度である平成27年度は、本研究の総括として、実験結果を他の課題、例えばワーキングメモリ測定尺度や認知検査などとの相関の検討を行い、認知的情報処理能力、特に処理における干渉や抑制能力の個人差を測定するテスト課題の開発を試みる。加えて、そのテスト課題の臨床的利用、特に教育場面への応用の可能性について検討する。 以上の実験的検討と並行して、認知的情報処理について、教育、発達の観点を取り入れるため、教育現場での視察や情報収集を行う。また、研究成果については学会発表や論文等を通して適宜公表を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、物品の価格および旅費等の変動によって生じた差額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品等の購入費に充てる。
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Research Products
(14 results)