2013 Fiscal Year Research-status Report
スクールCBT:教員による認知行動療法の児童のメンタルヘルスに及ぼす効果
Project/Area Number |
25380916
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松本 有貴 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (90580887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石本 雄真 立命館大学, 教育開発推進機構, 嘱託講師 (90612309)
中里 道子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (10334195)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学校心理教育 / 教員による認知行動療法 / ユニバーサル予防教育 / 子どものメンタルヘルス / 教師自己効力感 |
Research Abstract |
本研究は認知行動療法(CBT) の教育的応用を実施し効果をはかるために、3年間に次の目的を遂行するものである。 1.学校における教員の子どもへの効果的支援方法の検証(国際的CBTプログラム「フレンズ」 VS 学校に役立つ認知行動療法(CBT) VS 対照群)2.教員の支援体制の構築(地域の支援体制が機能するかどうかの効果検証)。そのため、 3年間のそれぞれの年度に対応する形で、研究計画を3つのパートに分け実施されている。パート①はニーズ調査、参加校のリクルーティングおよび研修の実施であり、主に25年度に実施される予定のものである。パート②は支援の実施およびプレ・ポスト・フォローアップ時での調査であり、主に26年度に実施される予定のものである。パート③は支援体制の検証および結果のまとめ・発表であり、27年度の実施される予定のものである。 25年度の計画であった質問紙調査(ニーズ調査)は終了し、データの分析に入っている。課題は、教員分は目標のほぼ100部に達したが、保護者対象質問紙調査ができなかったことである。教員研修の実施(比較検討を行うため、3群を設定する:国際的プログラム「フレンズ」、学校CBT, 対照群)のために協力校(目標6校)のリクルート活動を、まず千葉県で行ったがなかなか決まらなかった。そのため、東京都、大阪府・和歌山県・岐阜県・静岡県で活発にリクルート活動を行った。広く研究目的に賛同が得られたものの、参加校決定には難しさがあった。5校が関心を示し、 3校が決定、 2校は4月の職員会議により決定となっている。参加校が目的数に達しない主な理由は、年度をまたいだ事業に、1年間の担任教員が参加を決めることの難しさがあった。また、参加校の決定が遅れたために職員研修は実施できなかった。26年度は研究計画にそった可能な研究デザインで条件を整え、やり残した事業とともに実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の計画であった質問紙調査とリクルート活動は実施することができたので、1年目のプロセスとしてはおおむね順調であるといえる。しかし、前者においては、保護者対象質問紙が実行できなかったこと、後者においては、参加確保できた協力校の数が目標に達しなかったことにより、それぞれ課題が残る結果になっている。 それでも、25年度の2つの主な計画として設定したニーズ把握のための質問紙調査とリクルート活動はできており、目的にそった研究の進路は確保できたと考える。26年度計画に微調整を加えながら引き続いていけるものである。よって、3年間の研究事業を推進できる進展であると評価する。また、明らかになった課題は、今後の研究推進に有効な示唆を与えるものであった。教育委員会、管理職は研究の目的を理解して、職員会議に降ろすことには賛同が得られた。しかし、現場では、1年単位の担任制のために、職員自身が年度を挟んだ研究に協力するのを決意することが難しいようであった。1年単位の研究デザインを作る必要があることが示唆されたが、研究目標にそって先行知見を参考にしながら実施できる方向を検討していきたい。例えば、1年度内に前期と後期に分けたRCT,小学校低学年を含めるなどが、考えられる。 保護者アンケートも学校を通じて依頼する難しさがあった。26年度に計画どおり実施するか、または、対象を変えて(大学生など)、小学校で身につけたいコンピテンスを探るアンケート調査を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にそって実施するが、まず、25年度に実施できなかった職員研修を実施し、次に、以下の事業を遂行する。 ①学校CBTスキル研修グループが、年間を通し適宜スキルを応用していくのを支援する。例えば、週に一度または月に一度、意識的に認知行動療法を実施する日を設け進展を見ていくのを支援する。②フレンズプログラム研修グループが、スキルを応用するとともに、8~10回のプログラムセッションを実施するのを支援する。③プログラム群と待機群が同時期に質問紙に答えるよう依頼し実施する。④研修に参加・不参加の教員2群のメンタルヘルス(抑うつ、不安、ストレス)、教師効力感、QLO(生活の質)、および、児童のメンタルヘルスの比較を行う質問紙調査の準備をする。⑤参加校に学校に役立つCBTについてのニュースレターを配布する。⑥効果検証に関する調査として、プログラム群のプレ、ポスト、フォローアップ時に合わせて、児童および教員に自記式の質問紙を実施する。それらに並行して、可能なら、協力を得られた学校の保護者を対象に質問紙調査を行う。または、大学生アンケートを行う。 参加校が少ない場合(3校など)、 4・5年生では、学校CBTまたは「フレンズ」群と待機群の比較研究として年度内に終了するようにデザインを変更し、27年度に3群比較ができるような条件を考え整える。さらには、小学校低学年の参加協力校を求め3群を実施する、など柔軟に参加校の枠を広げる。 質問紙の分析を終了し、結果によって得られた情報(教員に必要なスキルの特定に妥当性を与える情報など)をプログラムの改善に生かす。国内外の学術学会で発表するとともに、学術論文に投稿する。最終年度の研究事業内容を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述したように、保護者対象の質問紙調査ができなかったこと、職員研修ができなかったことにより発生した。職員研修に関係する経費、職員のプログラム運営と生徒指導の支援に関する経費、保護者対象質問紙調査に関わる費用、それらに関わるデータ分析とまとめに対する謝金、必要な旅費である。 物品の経費は、職員研修・職員の教室スキル実施を撮影するビデオ、子どもの認知・感情・行動・発達など関連書籍、マジックや用紙など授業教材に必要である。旅費は、スーパービジョンとリクルートのための協力校訪問、国内学会として神戸市で行われる日本教育心理学会、国際学会としてオランダで行われるヨーロッパ認知行動療法学会参加に必要なものである。人件費・謝金は、研修講師謝金、プログラム実施サポート、質問紙データ入力とまとめに使われる。その他は、通信費、会議費、会場費などの研修会開催費として使われることが計画されている。
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