2013 Fiscal Year Research-status Report
小学生における無気力感メカニズムと教師介入プログラムの検討
Project/Area Number |
25380927
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
牧 郁子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (70434545)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 小学生 / 無気力感 / メカニズム |
Research Abstract |
小学生の無気力感のメカニズムを探索的に検討するため,無気力感に認知的要因がどの程度介在しているのかを探索的に検討するために,本研究では以下の小学生4年生・5年生の児童を対象とした調査・分析を行った。 まずやる気の出ないときの「自動思考の有無」に関して分析を行ったところ,自動思考なし群の人数の方があり群よりも有意に人数が多い結果となった。続いて自動思考ありの児童の自由記述を分類した結果,「倦怠・疲労」「回避・嫌悪」「思考の偏り」・「肯定的自動思考」の4つの自動思考に分類された。さらにこの4分類と「自動思考なし群」の無気力感測得点の差を検討した結果,「回避・嫌悪」が自動思考なし群よりも有意に得点が高いことが認められた。また選択肢形式で回答を求めた「やる気の出ない理由」に関して,無気力感高群・低群の違いを検討したところ,「“何とかする自信”もないし,“どうせうまくいかない”とも思うから」の選択肢において,有意に無気力感高群の人数が低群よりも多いことが示唆された。 以上の結果から,児童期の子どもの多くの子どもたちは抑うつ認知論的(Beck,1967)における抑うつスキーマが形成されるだけの経験の認知とそのモニタリングがまだ十分機能していない可能性があると考えられた。その一方で,自動思考あり群における「回避・嫌悪群」が自動思考なし群に比べて有意に得点が高い結果となったこと,また無気力感の理由に関して,無気力感低群の児童より高群の児童がコーピング・エフィカシーの低さと思考の偏りによる理由が有意に高い結果となったことから,非随伴経験の認知とそのモニタリングによる抑うつスキーマの原型が形成された結果,ネガティブな思考が生起して無気力感の高さにつながっている児童が存在する可能性も併せて示唆されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童の無気力感を探索的に検討するための調査は概ね計画通り実施・分析が進んでおり,2年目のH26年度はその分析結果を学会で発表する運びになっている。 その一方で,教師を対象とした児童の無気力感に関する質的調査データが十分集まっていないこと,児童の無気力感とその構成要因に関する文献研究をまとめる段階には至っていないことが,H25年度に十分実施できなかった点であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度はまず,H25年度に実施しきれなかった教師を対象とした児童の無気力感に関する質的調査の追加データの収集と文献研究を進める予定でいる。またH25年度の探索的研究結果を受けて,小学生の無気力感のメカニズムを検証するための量的研究を実施する。具体的にはH25年度の調査で,中学生を対象とした研究で無気力感の構成要因として認められている随伴経験,コーピング・エフィカシー,思考の偏りといった認知変数もある程度,小学生の無気力感に関係していることが示唆されたことから,これらの尺度の小学生版を作成し,その信頼性・妥当性を検証する。また先行研究において,児童期の子どもの心理適応と家庭での感情表出の関与が示唆されていることから,その影響も測定するため併せて児童期における情動交流尺度(仮題)も作成し,信頼性・妥当性を検証する。続いて作成した尺度を用いたアンケート調査を小学生(4年生~6年生)対象に行い,児童期の無気力感のメカニズムを量的に検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まずH25年度成果を協力校へ報告し(報告書,および研修の形式での報告),その成果を複数の学会で発表する予定であることから,その費用が必要である。またH26年度は小学生の無気力感のメカニズムを量的に検証するため,アンケート調査を実施・分析する予定であることから,その実施・分析・報告(報告書,および研修の形式での報告)のための費用も併せて必要となり,次年度の使用額が生じるものと考える。 H25年度の研究成果の学会発表(日本心理学会,日本教育心理学会)参加のための旅費,H25年度の調査結果の報告書作成費,H25年度調査結果に関する報告会(調査実施校)への交通費,小学生を対象としたアンケート調査用紙の印刷・製本費用,小学生を対象としたアンケート調査用紙の協力校への郵送費用,小学生を対象としたアンケート調査データ入力費用,小学生を対象としたアンケート調査結果の報告書作成費,小学生を対象としたアンケート調査結果の報告会(調査実施校)への交通費,統計ソフトの購入,研究関連書籍の購入に使用する予定である。
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