2014 Fiscal Year Research-status Report
小学生における無気力感メカニズムと教師介入プログラムの検討
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25380927
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
牧 郁子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (70434545)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 小学生 / 無気力感 / 予防 / プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
まず前年度の調査から,小学生の無気力感の構成要因として従来の認知変数以外の要因の関与可能性が示唆されたことから,児童期の無気力感との関連性が示唆される「児童用・感情交流尺度」を開発した。また中学生の無気力感の先行研究で関連性が示唆されている随伴経験・コーピングエフィカシー・思考の偏りについても,前年度の調査で関連性が示唆されたことから,児童用の測定尺度を作成した。いずれの尺度も,因子論的砂糖性・構成概念妥当性・内的整合性が認められた。続いて小学生における無気力感の構成要因を検討するため,作成した尺度を用いて,小学生を対象に調査を行いデータ解析した。無気力感を従属変数,随伴経験・コーピングエフィカシー・思考の偏り・感情交流を独立変数とした重回帰分析を行ったところ,感情交流尺度の下位尺度であるポジティブ感情の送受信・子どものネガティブ感情の送信・保護者のネガティブ感情の受信は有意な値が認められなかった。ただ感情交流尺度の第1・3因子と無気力感は中程度の有意な負の相関が,第2因子とは弱い有意な負の相関が認められたため,保護者との感情交流が他の変数を通じて,無気力感への間接的な影響を与えている可能性を踏まえ,小学生における無気力感モデル構築を試みた。その結果,経験から認知変数を経て無気力感につながる中学生の無気力感モデルとは違い,保護者との感情交流が認知変数につながり,認知変数が経験を経て無気力感につながる経路と,認知変数が直接無気力感につながる経路が確認された。以上から小学生における無気力感は,経験に基づく思考を媒介とした中学生の無気力感とは別経路で構成される可能性が示唆された。また教師介入プログラムの開発の参考にするため,保護者と子どもの感情交流の促進を主眼とした「体のことばに耳をすます‐気持ちイメージワーク‐」冊子を作成し,小学生の保護者対象の講演で試験的に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の小学生の無気力感要因の探索的検討結果を踏まえ,26年度は予定どおり昨年度の調査結果の学会発表(日本心理学会・日本教育心理学会)を行った。またその調査結果に基づき,小学生の無気力感を構成する変数の同定,およびその測定尺度の作成・信頼性・妥当性の検討および測定尺度を用いたメカニズム検討も,予定通り概ね実施することができた。ただし調査対象が大学附属小学校に通う小学生であったため,平成27年度に公立小学校に通う小学生データを足した上で,最終的な尺度の完成を行う必要がある。また当初の予定にはなかったが,次年度の「小学生の無気力感教師介入プログラムの開発の参考にするため,「保護者と子どもの感情交流の促進」のための冊子の作成・実施を保護者向け講演にて試験的に試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,(1)小学生の無気力感モデルの完成(2)モデルに基づく「教師のための無気力感予防ブログラムの立案」(3)「教師のための無気力感予防ブログラム」の実施と効果検討を行う。具体的には,(1)公立小学校データを追加した上で,最終的な小学生における無気力感モデルを完成させる,(2)平成26年度試作した「体のことばに耳をすます‐気持ちイメージワーク‐」冊子に,最終的な無気力感モデルの知見を加えて,教師が学校生活の中で児童に実施できる対応を中心にまとめた「大人がいれる子どものやる気スイッチ」冊子を作成し,教員研修型の無気力感予防プログラムを完成させる,(3)(2)で作成したプログラムを小学校の教員研修で実施し,効果検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
<調査関連費用>4つの尺度(随伴経験尺度・コーピングエフィカシー尺度・思考の偏り尺度・感情交流尺度)の信頼性・妥当性を高め,小学生の無気力感モデルを完成させるために,公立小学校データを追加し再分析する必要がある。このためサンプリングとして関西・四国・関東などの公立小学校への調査依頼が必要であり,そのための旅費・質問紙作成費・郵送費・データ入力費用などが必要である。また小学生の無気力感予防プログラム作成に伴う冊子および効果検討用の質問紙の印刷費,実施依頼・プログラム実施予定校への交通費なども必要である。 <情報発信・収集費用>小学生の無気力感の最新知見を発信・収集するため,関係諸学会への参加と本研究知見の発表を行う予定あることから,学会への参加費用とそれにともなう旅費が発生する可能性がある。また最新知見の情報収集のための専門書(英書・和書)の購入を予定しているため,書籍関連費用が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
<調査関連費用>公立小学校への調査依頼交通費(児童への調査・教員研修でのプログラム実施依頼・教員研修への出張)・調査用紙印刷費(児童への調査用紙・教員研修でのプログラム冊子・調査紙)・児童への調査および教員研究での調査用紙郵送費(送付・回収)・調査データ入力費(児童への調査および教員研究での調査)
<情報発信・収集費用>日本教育心理学会(新潟)への参加費・旅費,日本心理学会(名古屋)参加費・旅費,専門書籍の購入(英書・和書)
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Research Products
(2 results)