2015 Fiscal Year Research-status Report
教師自身の自殺予防のための心理教育プログラムの開発的研究
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25380929
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
新井 肇 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (60432580)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自殺予防 / 自殺念慮 / 離職意思 / バーンアウト / レジリエンス / ソーシャルサポート |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度に教師の自殺念慮とバーンアウト、レジリエンス、ソーシャルサポートとの関連についての予備調査(中学校教師135人対象)を実施した結果、バーンアウトと自殺念慮との相関、及びレジリエンスとソーシャルサポートが抑止要因となることが確認された。平成28年度に、小・中学校教師を対象とした本調査を実施する予定である。 また、バーンアウトや自殺をめぐる問題は時間軸を伴うプロセスの現象である点を考慮し、教師の危機と自殺のプロセスの解明を図るために、ライフヒストリー研究の手法に依拠し、平成26年度には、心理的危機を背景に離職した経験をもつ2人の元教師(離職時期は20代と50代)に半構造化面接を実施した。平成27年度には、教職の危機に陥った経験をもつ3人の教師(新人、中堅、ベテラン)に半構造化面接を行いケースの個別性と併せて、プロセスの共通性を析出することを試みた。その結果、自殺念慮の抑止要因として、職場の教師集団が自助グループ的な機能を果たすか否かの重要性が示唆された。その点から、自殺予防を学校外の専門家に委ねるだけでなく、職場における相互サポートシステムの確立を可能にするようなプログラム開発が目指された。 以上の点をふまえ、平成27年度に、3校(小・中・高、各1校)において、教師を直接対象とするプログラムと児童生徒を対象とするプログラムとを含んだ包括的な自殺予防プログラムを校内研修において試行的に実施した。その過程で、教師を直接対象とするプログラムよりも、児童生徒を対象とする自殺予防プログラムの方が、教師集団の抵抗も少なく、間接的に教師の自殺の抑止効果をもつことが示唆された。そこで、平成28年度には、児童生徒を対象とする自殺予防教育の前提となる教師を対象とする校内研修プログラムとして、「教師自身の自殺予防のための心理教育プログラム」の作成と効果検証を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「教師自身の自殺予防のための心理教育プログラム」を作成し、校内研修等で試行的に実施してきたが、受講者の校種や経験の違い等から、複数のタイプのプログラムを用意することの必要性が確認された。また、受講者の心理的安全面への一層の配慮が求められることも明らかになった。 そのため、上記の観点から、国内外の先進的取り組みをあらためて調査したうえでプログラムの再検討をし、その効果検証を行う予定である。効果測定の指標の確定と、多様な研修実施先の確保が進んでいないことが課題である
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に試行してきた自殺予防プログラムの内容の精緻化を図り、実効性のある「教師自身の自殺予防のための心理教育プログラム」を作成し、校内研修等で実施し、その有効性の検証を行う。また、実施担当者を養成するためのシステム構築の方向性を探る。
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Causes of Carryover |
自殺念慮とバーンアウト、レジリエンス、ソーシャルサポートに関する、小中学校教師を対象とする本調査の実施ができなかったため、印刷代や郵送費、データ入力、分析ソフトの購入等に関する支出がなかった。また、離職の危機や自殺念慮に陥った複数の教師への聴き取りに要する国内旅費が少なく済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
自殺念慮とバーンアウト、レジリエンス、ソーシャルサポートに関する、小中学校教師を対象とする本調査平成28年度8月に実施し、データの整理と分析を進める。また、9月に海外調査を実施するとともに、国内の聴き取り調査を継続し、データの整理を行う。また、「教師自身の自殺予防のための心理教育プログラム」の校内研修における実施を国内数カ所で予定し、効果検証を行う。
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