2013 Fiscal Year Research-status Report
唾液中生化学成分を生物学的基盤とする大学生のなまけ傾向スクリーニング尺度の開発
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25380936
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
橋本 久美 札幌国際大学, 人文学部, 准教授 (30438410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜上 尚也 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (70221504)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | なまけ傾向尺度 / 唾液中セロトニン / 短期報酬予測学習 / 唾液中クロモグラニン |
Research Abstract |
今年度は「なまけ傾向尺度」の標準化に向け、まず、前年度までに集積したデータの確認と再分析を行い、この尺度が十分な信頼性・妥当性があることを、国内外の学会発表を通じて発信を行った。信頼性については、1ヶ月の間隔を置いた被験者での相関係数は十分な値であったこと、構成概念妥当性についても、別々の被験者で同様の結果が認められ、各因子のα係数も一定の水準以上にあることが確認された。内容的妥当性については、同分野の研究者との意見交換も含めて検討しているが、十分な妥当性があると考えている。基準関連妥当性について、認知的変数として「不合理な信念尺度」、パーソナリティ傾向としてNEO-FFI・TCI・SSS・BIS-BAS、精神的健康度指標としてGHQ・SDS・STAIと相関分析を行っており、各尺度との関連性を確認している。さらにそれら変数と「なまけ傾向尺度」、唾液中セロトニンを含めた複雑な因果関係を説明するための共分散構造分析によるパス図を構想している。また、生物学的マーカーを含むアセスメント自体が新しい試みであるため、唾液中物質との関連については、エビデンスを集積するための方法論を含めて、検討の必要がある。健常者では唾液中セロトニンは衝動性パーソナリティと負の相関を持つことを確認しており、2005年度に行った研究結果を再現している。さらに、健常者における唾液中セロトニンと唾液中クロモグラニンの正の相関が一応確認されたが、比較的低い値であったため2つの生化学物質が連動するかについては慎重に検討する必要がある。 唾液中セロトニン濃度は、不安障害圏臨床患者では健常群より高い結果であったが、先行研究の結果も含め精神障害レベルに達すれば、消化器系セロトニンが不安情動を引き金に活性化すると推測される。今のところ、唾液中セロトニンと「なまけ傾向尺度」の関連は健常群に限定しての検討を続行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点では「なまけ傾向尺度」の標準化に向け質問紙データによる統計分析を進めている段階である。平成26年度には、他大学への依頼も含め1000人規規模の大規模データによる分析を予定している。生物学的マーカーとしての唾液中セロトニンについても引き続き、生化学分析を行い「なまけ傾向尺度」のエビデンスとして加える予定である。この2点の準備に関しては、概ね順調に進行している。しかし、平成25年度の達成目標に掲げた、「唾液中セロトニンが脳内セロトニンを反映している直接のエビデンスを得ること」については、中枢系セロトニンデータを分析するために必要になる血液検体の採取は、患者ではない健常者に対しては倫理上困難であると判断されたために、現時点では医療機関の協力が得られていない。そのため、代替案として脳内活動を反映すると考えられる簡易脳波計の測定及び高次機能に関する心理アセスメントを用いる予定である。現時点では簡易脳波計の測定技術を確立中であること、高次機能アセスメントの使用方法の習得をするための訓練期間が必要であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、「なまけ傾向尺度」とその基準関連妥当性を示すための質問紙を作成し、他大学への依頼も含め1000人規規模の大規模データによる分析を予定している。また、生物学的マーカーとしての唾液中セロトニンについても引き続き、同意の得られた被験者からのサンプルによる生化学分析を行い、「なまけ傾向尺度」のエビデンスとする予定である。さらに、簡易脳波計の測定及び高次機能アセスメント、心理実験と「なまけ傾向尺度」「唾液中セロトニン」データを集積し、それらの関連を確認する。年度後半には、パイロットスタディとして、なまけ傾向尺度でスクリーニングした被験者による脳波計フィードバックの継続的な実験を行い、怠惰学習傾向の改善への介入法を探る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由として、研究進行の都合上、平成26年度春に実験を行うことになり、その必要経費が年度を越したため。 唾液中セロトニンとの関連が推測される唾液中イサチンの採取と分析を行う。被験者に暗算等の精神的ストレス課題を課した前後の唾液中セロトニン濃度及びイサチン濃度の測定と、データ解析を行う。唾液中セロトニンとイサチン両物質の関連の確認と、精神的ストレス測定に対する生物学的マーカーとしての使用できるかの検討を行いたい。昨年度、同実験のパイロットスタディを行っており、今回は人数を多くして行うので、実験用の消耗品が多く必要になり、さらに生化学分析で使用する液体クロマトグラフィのカラムを新調する予定である。
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Research Products
(5 results)