2015 Fiscal Year Research-status Report
就労を見通した広汎性発達障害学生への地域連携による対人スキル教育
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25380937
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
山本 佳子 いわき明星大学, 教養学部, 教授 (90336462)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発達障害学生 / 就労支援 / 障害特性 / 自己理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が関わる2大学において、学生相談の場を通して広汎性発達障害学生の就労支援に取り組んできた。学内での個別相談を基本としながら、各種心理検査・職業適性検査・模擬職場体験・就労スキルトレーニングなどの使用や、学外の就労移行支援事業所などとの連携を通し、本人の障害特性を明らかにし、自己理解が深まるように配慮している。 そうした地域連携の就職支援で、障害者枠での就労を可能にする学生も出始めている。就職を果たした学生の成功要因を探ることにより在学中の必要な支援についても考察できると考え、障害者枠での就労を可能にする要因についての分析をした。障害特性を踏まえた進路を選択する際の促進要因としては、自分の特性に対する自覚や、家族の理解が必要なことは言うまでもないが、学生相談やサロンなどの小集団での適応や成長の経験があったり、支援を肯定的に受け入れる体験の存在が大きいように思われた。また、心理検査の結果や模擬的就労体験、学内での多種類の活動とその振り返りが、自己分析の役に立っていた。 一方、彼らの自己理解を促進する支援のために、卒業研究段階での躓き要因分析も有効であると考えられた。6名の文科系卒業研究過程を分析した結果、その躓きは、単なる知的能力の問題ではなく、就労にも影響するような障害特性がかなり関与しており、この体験は心理検査や模擬就労体験と同様に本人の「自己理解」に役立てることができることや、この段階での支援が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「就労を見通した広汎性発達障害学生への地域連携による対人スキル教育」が課題であったが、未診断の障害学生が多い大学や地域などの現状から考えると、「対人スキル教育」以前に「本人の障害に対する自己認知」を促す「自己理解」の方が、重要であり、ニーズも高いことが明らかになってきた。また、「対人スキル」のみでなく一般的な「就労能力」の査定や詳細な障害特性の洗い出しなどの「アセスメント」が適正な職業選択には有効であると考えられた。 また、想像力に問題を持つ広汎性発達障害学生にとって地域を巻き込んだ模擬就労体験は「自己理解」のためにも、就労準備スキルの「アセスメント」のためにも欠くことができない。 そのため、就労体験に向かわせる前段階に時間がかかったこと、計画よりも詳しいアセスメントが必要になったことで研究に遅滞が出ているが、学内でのシステムも整ってきたので、今年度修了できるよう、分析を急ぎたい。
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Strategy for Future Research Activity |
対象となる発達障害傾向を持つ学生は、多くが未診断であるため、在学中という限られた時間内で、詳しいアセスメントや肯定的で前向きな自己理解を構築しなければならなかった。そのため、学内で個別相談・心理検査・就労模擬トレーニングを施行し、その後地域の就労体験の場を利用しながらフィードバックを繰り返すことは、当初の研究計画と同様であるが、分析とトレーニングの観点を「対人スキル教育」に限定せず、障害への気づきや自覚段階も含む「自己理解」に置くことが必要となった。将来の長期的就労を可能にするための基本となる「自己理解」のための、在学中に出来る支援方法を構築することが研究の変更点である。 今年度は、研究対象ケースを増やしながらも、研究成果のまとめ、発表をすることにより、試行錯誤で進んでいる広汎性発達障害学生の就労問題に寄与したい。
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Causes of Carryover |
対象となる広汎性発達障害学生の準備状態が整わず、また、予定した「検査者」「就労評価者」「就労援助者」「就労トレーナー」が十分活用できなかったため、使用額を適正に執行することができなかった。そうしたことから研究に遅れが生じており、発表するに至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
検査・評価・援助者として、学生相談経験のある看護者と、心理士が確保でき、順調に検査・分析や面接、就職活動の援助がすすんでいる。今年度も人件費としての支出が今後促進される。また、対象学生の登録や個別面談も今までの経験を経て方法論が確立できてきているため、徐々に人数も増えると思われる。最終段階に当たり、学会発表も予定している。そのための旅費の支出も必要になる。
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